企業が従業員に健康診断を実施することは労働安全衛生法で義務付けられています。しかし健康診断の実施担当者の中には、「健康診断の検査項目にはどんなものがあるの?」や「定期健康診断の実施期間を知りたい」と困っている方も多いのではないでしょうか。
今回は健康診断の種類と実施期間、検査項目の詳細などを解説していきますので、検査項目ごとの費用を把握したい場合にお役立てください。健康診断結果のおすすめの保存方法についても述べているので、ぜひ最後までご一読ください。
企業に実施が義務付けられている健康診断は、以下の4種類です。
業種に関わらず実施義務があるのは「一般健康診断」であり、ここから雇入れ時の健康診断や1年以内に1回の定期健康診断などの5種類に分類されます。
一方の「特殊健康診断」は、法律で有害と定められている業務に従事する労働者を対象として実施される健康診断のことです。
以下、これら2種類の健康診断の概要について、詳しく解説していきます。
「特殊健康診断」は、労働安全衛生法で特に有害だと定められた業務に従事する労働者を対象としており、以下の8つが該当します。
また、これらのほかに粉じん作業に従事する(従事した)労働者に対し、じん肺法によりじん肺健康診断の実施が事業者に義務付けられています。
「一般健康診断」の実施は業種に関わらず全ての企業に義務付けられており、その種類は以下の5つに分けられます。
このうち全ての企業に共通する健康診断が、「雇入れ時の健康診断」と「定期健康診断」です。
一般健康診断のうち、全ての事業者に実施が義務付けられているのが、「雇入れ時の健康診断」と「定期健康診断」です。雇入れ時の健康診断と定期健康診断の対象者、検査項目、結果表の見方は次のとおりです。
雇入れ時の健康診断の対象は「1年以上雇用する予定があり、週の労働時間が正社員の4分の3以上の労働者」です。そのため上記条件に該当する労働者であれば、正社員だけではなく、パートやアルバイトも検査対象に含まれます。
この雇入れ時の健康診断の検査項目は、労働安全衛生規則第43条において次のように定められています。
雇入れ時の健康診断の検査項目は定期健康診断の検査項目とほぼ同じであり、入社前3ヶ月以内に上記の項目の健康診断を受けた方は、その結果を会社に提出すれば新たに受診する必要はありません。
また、雇入時健診の結果の見方については「一般社団法人 日本健康倶楽部|健康診断結果の見方」を参考にしてください。
定期健康診断の対象は「常時雇用する労働者」であり、1年以内に1回実施されます。定期健診の「定期」という言葉は、“必ず毎年同じ時期に”という意味であり、企業ごとに実施時期を決めることが可能です。
定期健康診断の検査項目は、以下のように雇入れ時の健康診断とほぼ同じです。
雇入れ時の健康診断と異なる点は、自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、医師が総合的に判断して、次の各項目が省略可能だということです。
また、以下の業務従事者は「特定業務従事者」に該当します。
出典:健康診断を実施しましょう(厚生労働省)
- イ.多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
- ロ.多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
- ハ.ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
- ニ.土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
- ホ.異常気圧下における業務
- ヘ.さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
- ト.重量物の取扱い等重激な業務
- チ.ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
- リ.坑内における業務
- ヌ.深夜業を含む業務
- ル.水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
- ヲ.鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
- ワ.病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
- カ.その他厚生労働大臣が定める業務
雇入れ時の健康診断と定期健康診断の実施時期は以下のとおりです。
ただし、実施時期によっては企業の定期健康診断と雇入れ時健康診断が重なる場合もあるので、そのときは片方を省略しても問題はありません。検査項目は定期健康診断と雇入れ時健康診断でほぼ共通していますが、基本的には省略できない後者を優先しましょう。
健康診断の受診後は企業が診断結果を保存し、受診者全員に通知する必要があります。 診断結果によっては医師から意見を聞く必要性も出てきます。
また、健康診断の結果を保存する際も、その保存期間は5年間と定められており、保存形式も書面か電子データかのどちらかです。
従業員の健康診断受診後、企業側がとるべき対応について詳しく解説します。
医師による所見の有無に関わらず、企業は受診者全員に健康診断の結果を文書で通知する必要があります。健診結果に異常がなくても、自分の身体の状態を知っておきたいという方もいるので、必ず診断結果を通知しましょう。
また、常時50人以上の従業員を雇っている企業は、労働基準監督署へ健康診断結果を報告する義務があります。
「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」では、事業者は、就業上の措置の実施に当たって、産業保健業務従事者(産業医、保健師等、衛生管理者その他の労働者の健康管理に関する業務に従事する者をいう。)以外の者に健康情報を取り扱わせる時は、これらの者が取り扱う健康情報が就業上の措置を実施する上で必要最小限のものとなるよう、必要に応じて健康情報の内容を適切に加工した上で提供する等の措置を講ずる必要があり、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の加工前の情報や詳細な医学的情報は取り扱わせてはならない、としています。
健康診断の結果で異常の所見があると診断された従業員がいる場合は、労働者の健康維持のために就業上はどのような措置が必要かを、受診日から3ヶ月以内に医師に聞かなければなりません。
産業医を選任している場合は職場の産業医に意見を聞きますが、産業医を選任していない場合は、地域産業保健センターに相談してください。医師の意見に応じて次で示す対応を行います。
「就業制限」とは、勤務による負荷を軽減するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、作業転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講じる事を言います。
就業制限の対象にならない場合でも、労働者の健康が悪化することを防ぐため、必要な人には医師または保健師からの栄養指導、運動指導、生活指導などを受けさせる必要があります。
企業は従業員の健康診断結果を保存する必要があり、その際は労働者の同意が必要です。
保存形態は書面か電子データかを選ぶことができ、定期健康診断だと保存期間は5年間だと義務付けられています。また二次健康診断の結果は企業側に保存義務はないものの、健康管理を継続的に行える環境を整える観点から、保存することが望ましいです。
また、派遣社員の場合は派遣元事業者側が、一般健康診断の診断結果を保存しますが、労働者側の同意を得ることなく派遣先へ健康診断結果を提供してはいけません。
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<監修者プロフィール>
影山広行
日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、放射線診断専門医、抗加齢医学専門医
嘱託産業医として様々な業態の事業所を担当。法令遵守、労働安全衛生と経営効率の両立を意識して業務に当たる。
PET-CTを含めた健診、生活習慣治療、アンチエイジング、スポーツ医学などの実績も豊富。