企業の利益追求だけでなく、従業員の心身の健康も守るため、健康経営という言葉がよく聞かれるようになりました。しかし、健康経営には定量的な基準がなく、自社内のデータだけでは客観的な評価が難しいところがあります。そこで、本記事では経済産業省が選定する「健康経営銘柄」についてご紹介します。選定基準や注意点もご紹介しますので、健康経営を目指す企業の経営者・担当者の方はぜひご一読ください。
健康経営銘柄とは、東京証券取引所の上場企業(TOKYO PRO Marketを除く)の中から、特に健康経営に優れた企業を選定したものです。原則として33業種で各1社の選定となるため、非常に狭き門と言えるでしょう。なお、健康経営銘柄に該当する企業がない場合は、当該業種からは選定されないこともあります。
そもそも健康経営とは経済産業省が主導で推進する取り組みの一つで「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義されています。
出典:経済産業省[健康経営]
健康経営では、従業員の健康管理も企業の経営戦略の一環として捉え、従業員の健康維持・増進を投資と考えます。従業員が健康を保ち、あるいは増進することで、モチベーションやパフォーマンスを最大限に発揮できれば、企業全体として業績や株価アップにつながるという考え方に基づいています。
健康経営銘柄は、こうした健康経営の考え方に基づき、上場企業の中でもより優れた取り組みを行っているとされた企業を認定することで、投資家をはじめとしたステークホルダーからの信頼を得たり、従業員や顧客からの社会的評価が向上したりすることが期待されるというものです。
経済産業省が健康経営に関して認定を行う制度には、健康経営銘柄の他に健康経営優良法人があります。これらはいずれも健康経営に優れた企業を顕彰する制度ですが、主に認定の対象となる法人の範囲に違いがあります。
健康経営銘柄 | 東京証券取引所の上場企業(TOKYO PRO Marketを除く) |
健康経営優良法人 | すべての法人 |
もちろん、いずれの場合もこの他に健康経営に優れているとみなされるための要件がありますが、健康経営銘柄の場合は非上場企業を対象としていないため、非常に範囲が狭くなります。健康経営銘柄のこのデメリットを受け、すべての法人に健康経営に優れているかどうかの審査を受けられる機会を設けたのが健康経営優良法人です。
健康経営優良法人について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご参照ください。
[健康経営優良法人を取得しよう!制度概要や認定基準、申請方法を紹介]
健康経営銘柄に選定されることで、以下のようなメリットが期待できます。
健康経営銘柄に認定されることで、従業員を大切にしている企業としてのイメージがつくため、企業価値の向上につながります。同時に、いわゆるブラック企業など従業員の心身の健康を損なう企業を根絶しようという、企業の社会的責任を果たしていることのアピールにもなるでしょう。
従業員の心身の健康を大切にする企業だと幅広く認知されれば、既存の従業員だけでなく求職者に対しても「この企業で働きたい」と思ってもらいやすくなります。働き始めた後も、職場環境が良く、モチベーションやパフォーマンスを活かしきれる職場であれば働き続けやすく、離職率低下や定着率向上につながるでしょう。
健康経営銘柄に認定されれば、従業員一人ひとりが自身の健康について考える良いきっかけになり、社内の健康意識向上も期待できます。こうした効果は最終的に管理部や総務部のひとつの評価指標にもなり得るため、管理部や総務部のモチベーションアップにつながるでしょう。
健康経営銘柄に選定されることで、株式投資の面で期待される効果があります。2015年、国連で「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、持続可能な社会をつくり、維持していくことが急務となりました。投資家の間でも、企業はお金さえ儲ければ良いのではなく、中長期的な視点で持続しながら成長していけるような企業に投資する「ESG投資」の機運が高まっています。
そんな中、健康経営に取り組み、従業員の健康に投資する企業はSDGsに貢献しており、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス、企業統治)」のいずれにとっても良い企業である、と考えられるのです。投資家からの評価が高まれば、注目を集めて株価が上がることも期待できます。
また、健康経営銘柄に選定された企業の業績を調査した「三菱UFJモルガンスタンレー証券」の調査・分析によると、健康経営銘柄に選定された企業では株価のボラティリティ(価格変動比率)が低いことがわかっています。株価の変動が少ないということは、突然下落する可能性が低く、安定した経営を保てているということでもあり、投資家にとって安心して投資できるという評価を受けやすくなるのです。
出典:経済産業省「健康経営の推進について」
健康経営銘柄に選定されるためには、毎年8〜10月ごろに行われる「健康経営度調査」に回答し、健康経営優良法人(ホワイト500)と同様の認定要件をクリアした上で、以下の基準を満たす必要があります。
また、前年度も同調査に回答している、社外への情報開示の状況について評価が高いなどの指標を満たすことで、一定の加点が行われます。要件にあるROEが高い企業についても、一定の加点対象となります。あわせて、重大な法令違反がないことも条件の一つです。
ただし、これらは2022年3月現在経済産業省ホームページにて発表されている「健康経営銘柄2021」の選定基準であり、2022以降に変更となる可能性があります。「健康経営銘柄2022」以降の選定を目指す場合は、経済産業省の発表によく注意しましょう。
健康経営銘柄に選定されるためには、まず「健康経営度調査」に回答するにあたり、各種法令を遵守している、リスクマネジメントを行っているという誓約事項を満たす必要があります。特に、以下のポイントは新たに追加された項目なので、十分注意しましょう。
特に、従業員にもきちんと共有されなくてはならないということ、評価結果のフィードバックを受けたらすぐに保険者に共有することは、従業員主体である健康経営の理念としても、今後の取り組み改善にも重要なポイントです。
また、健康経営度調査の中で「情報開示の促進」「業務パフォーマンスの評価・分析」「スコープの拡大」の3つが盛り込まれ、自社内にとどまらず取引先の健康経営も支援しているかどうか、社会全体での健康維持・増進に寄与しているか、なども評価対象となりました。これらを踏まえ、健康経営銘柄の認定を受けるためには、自社内にとどまらない広く長期にわたる視点を持った取り組みが求められるでしょう。
健康経営銘柄とは、東京証券取引所の上場企業の中から、健康経営において特に優れた取り組みを行っている企業を33業種で各1社ずつ選ぶものです。健康経営銘柄に選ばれることで、企業のブランディングや人材確保につながるほか、投資家からの注目を受けて株価がアップする効果が期待できます。
健康経営銘柄に選ばれるためには、そもそも健康経営調査において高い評価を受けなくてはなりません。健康経営調査の要件を満たし、高い評価を得るためには、自社が抱える健康課題について知ることが重要です。
従業員の健康状態について正しく把握し、健康課題について知るためには、Growbase(旧:ヘルスサポートシステム)などのクラウド型健康管理システムを使うのがおすすめです。健康診断、保健指導、面談記録などを一元管理し、多角的に分析することで、より良い制度や施策を構築・実施できるでしょう。健康経営の実施により、従業員のパフォーマンスやモチベーションが高まれば、結果的に財務的にも良い効果が期待できると考えられます。
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