ストレスチェックは、2015年の労働安全衛生法改正により一定規模以上の職場で実施が義務付けられました。では、ストレスチェックの実施義務がある職場や実際の実施方法、その後の対応についてはどのように行えば良いのでしょうか。本記事では、ストレスチェックの実施義務や目的、実施手順や従事者、その後の対応について順を追って解説します。ストレスチェックについて知りたい担当者の方は、ぜひご一読ください。
ストレスチェックには様々な形態がありますが、中でも簡単に行えるものとして、厚生労働省が提供する「5分でできる職場のセルフストレスチェック」があります。全57問の簡単な質問に答えることで、自分のストレスの原因となりえる要素やストレスがどう身体に現れているか(心身反応)、ストレスをうまく解消できているかどうかなどを知ることができます。
企業がストレスチェックを行う目的として、主に従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐこと、職場環境の改善を行うことの2つが挙げられます。
従業員のメンタルヘルス不調を防ぐためには、業務に関するストレスや不安を把握し、どんな要因が心理的な負荷になっているか知る必要があります。ストレスは知らず知らずのうちに溜まっていくため、本人も気づかないうちに高ストレス状態になっていることは少なくありません。気づきを促すことで、セルフケアにつなげることができます。
また、従業員が感じるストレスの要因を知ることで、職場環境の改善につなげられます。人間関係が心理的な負荷になっているなら適切な指導や配置転換、照明や換気など物理的な環境がストレス源になっているなら積極的に環境改善に取り組む必要があります。特に後者は潜在的要因でストレス源として見逃されやすいため、ストレスチェックを行うことで見つけやすくなるでしょう。
ストレスチェックを行った後は、個別対応だけでなく集団分析を行い、部署ごとやチームごとの傾向を把握することも大切です。例えば、ある部署だけ高ストレス者が多い場合、長時間労働や高すぎる業務負荷など、背後に根本的なストレス要因、取り除くべき課題が潜んでいる可能性が高いと言えます。こうした根本的な要因に気づくことも、ストレスチェックの重要な目的の一つです。
職場でのストレスチェックは、2015年12月から一定規模の事業場で義務化されています。ストレスチェックが義務化された背景として、仕事や職業生活に関する強いストレスを感じる人の割合が半数を超えていること、精神障害による労働災害の認定件数が増加傾向にあることなどが挙げられます。
参考:厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査」「令和3年 過労死等の労災補償状況」
こうした事情から、精神疾患を発症する前にメンタル不調を防いで労働災害を減らそう、仕事や職業生活において強いストレスを感じる人が適切な指導を受けたり、セルフケアを行えたりするようにしようとする試みの一環がストレスチェックの義務化です。ストレスチェックが義務化されているのは、常時50人以上の従業員を使用する事業場です。50人未満の事業場では努力義務とされていますが、できる限り実施するのが望ましいでしょう。
常時使用する従業員とは、正社員以外にも以下の要件を満たす非正規社員(パートタイマー、アルバイトなど)が当てはまります。正社員だけがストレスチェックの対象になるわけではないことに注意が必要です。
ストレスチェックの実施頻度は1年以内に1回とされており、前回の実施から1年以内に次の検査が行えれば頻度を増やすこともできます。いつ実施するのが良いかは、衛生委員会で討議した上で決定するのがよいでしょう。
なお、ストレスチェックの実施義務がある事業場がストレスチェックの実施を怠った場合の直接的な罰則はありません。しかし、労働基準監督署へストレスチェック実施の報告を怠った場合、50万円以下の罰金が課せられます。ストレスチェックの実施後は、速やかに労働基準監督署への報告を行いましょう。
ここでは、ストレスチェックの実施手順をステップ別に紹介します。
ストレスチェックを導入するにあたっては、まず基本的な方針を検討・策定し、実施の体制作りや明文化、周知徹底を行う必要があります。決定した方針や基本的な流れ、枠組みについて関係者全員が正しく理解した上で、相互連携しながらストレスチェックを実施することが重要です。
最初に策定すべきなのは、実施内容です。具体的には、以下のようなことを安全衛生委員会などで議論の上、決定します。
決定した内容は、社内規定として明文化しましょう。また、従業員に周知徹底することも重要です。これらの基本方針が決定したら、次に質問票の内容と実施体制を決定します。
質問票の内容は以下の3つの領域に関する項目が含まれていることが原則ですが、細かい内容については企業ごとに独自で設定することも、各種サービスを利用することもできます。前述の厚生労働省のセルフチェックを使うのも良いでしょう。
実施体制については、担当者や実施者、実施義務従事者、面接指導の担当医を決める必要があります。実施者や実施義務従事者については後述しますが、ストレスチェックの結果によって不当な人事が行われないようにするため、人事や総務のメンバーが兼任できないことに注意しましょう。
担当者とはストレスチェックに関する計画を策定したり、進捗管理を行ったりする人物のことで、これについては人事・総務のメンバーが行うのが一般的です。担当医については、もともと産業医と契約している事業場であれば、産業医に依頼するのがよいでしょう。普段から事業場についてよく理解している人に担当してもらえるため、意見聴取の際にもスムーズです。
準備が済んだら、実際にストレスチェックを行います。紙で行う場合は質問票を配布し、受検してもらいますが、オンラインで行う場合は各自ストレスチェックの画面に接続し、受検してもらいましょう。後述しますが、クラウド型健康管理システムなどを使えばマイページから直接受検でき、誰かに結果を見られる心配がなくおすすめです。
紙で行った場合は、回収時に記入した回答が見えないよう封筒に入れたり、折り曲げて回収ボックスに入れたりする工夫を行いましょう。特に、実施者・実施事務従事者以外の第三者に見えないような状態で行うことが重要です。前述のように人事権を持つ人がストレスチェックを受けた従業員本人の許可を得ず、勝手に結果を閲覧することは禁じられていますので、十分に注意しましょう。
受検が済んだら質問票への回答をもとに「実施者」がストレス状態を評価し、本人に結果を通知します。このとき、医師の面接指導の要否も判定します。医師の面接指導が必要とされるのは主に高ストレス者であり、高ストレス者の判断は原則として以下の基準で行われます。
ただし、企業が産業医などの実施者と検討し、独自に策定した質問票や判断基準がある場合、これに限りません。また、高ストレス者との判断に当てはまらなくても、周囲のサポートが著しく低いために高ストレス者になる可能性が高いと判断した人を医師の面接指導が必要と判定するなど、実施者が臨機応変な対応をとることもあります。
ストレスチェックの実施者や実施事務従事者について、詳しく見ていきましょう。
ストレスチェックの実施者になれるのは、医師、保健師、精神保健福祉士、または「厚生労働大臣の定める研修を受けた、看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師」のいずれかに限られます。前述のように、人事権を持つ人は実施者になれないため、人事部に所属するけれど精神保健福祉士の資格を持っている、などの人は実施者になることができません。
ストレスチェックの実施者は、産業医が兼任するケースも多く見られます。これは、産業医を選定する要件が「常時50人以上の従業員を使用する」ことであり、ストレスチェック義務化の要件と同じなため、ストレスチェックが義務化される職場では産業医と契約していることから、ストレスチェックから面接指導まで一貫して担当してもらうのがスムーズだからです。
実施事務従事者とは、実施者の補助を行う者のことを指します。実施者の指示で質問票のデータを入力したり、質問票の配布と回収を行ったりします。これも人事権を持つ人は携わることができないため、企業の人事権を持たない衛生管理者、事務職員などが担当することになります。
ストレスチェックの回答や結果は重要な個人情報であり、受検した本人の同意なく回答や結果を漏えいした場合は刑罰が課されますので、実施者だけでなく実施事務従事者も、回答や結果の取扱いには細心の注意を払う必要があります。
ストレスチェックは実施して終わりではなく、行った後の対応が重要です。中でも特に必要なことについて、4点ご紹介します。
ストレスチェックで高ストレス者と判断された場合、または医師による面接指導が必要と判断された場合には、本人の申し出があれば医師による面接指導を行います。ここで重要なのは、医師による面接指導は強制できない代わりに、面接指導を受けたい人が申し出やすい雰囲気を日頃から作っておく必要があるということです。
面接指導というだけでどうしてもハードルが高く感じてしまう人は多いほか、ストレスチェックの結果、面接指導を受けることを周囲に知られたくないと思う人も少なくありません。そのため、ストレスチェック後に面接指導を受けたい人、受ける必要がある人がきちんと面接指導を受けられるよう、面接指導のメリットや面接指導による不利益がないことなどをあらかじめわかりやすく伝えておく必要があります。
面接指導が終わったら、担当医から意見聴取を行い、必要に応じて労働時間の是正、作業の転換など就業上の措置を行ったり、職場環境の改善を行ったりします。面接指導の申し出は結果の通知から1ヶ月以内に、面接指導の実施は申し出から1ヶ月以内に行う必要があります。さらに、面接指導終了後、これも1ヶ月以内に意見聴取を行わなくてはなりません。
ストレスチェックの結果について、部署や課ごとのグループで集団分析し、ストレス傾向をさぐること、分析結果から職場環境の改善をはかることが努力義務とされています。例えば、高ストレス者と判定された人が多い部署では、長時間労働や高い業務負荷などの課題があるかもしれません。分析結果からこうした気づきを得て、改善に活かすことが重要です。
ただし、集団分析を行う場合は原則として10人以上のグループで行います。これは、10人未満の少人数になると結果から個人の特定につながるおそれがあるためです。個人が特定されてしまう情報を取得する場合、結果を見るために当該チームのすべての従業員に結果を閲覧する同意を得なくてはなりません。そのため、集団分析を行う際にはグループが少人数にならないよう、注意しましょう。
ストレスチェックの結果や面接指導の結果は、5年間保存しておく必要があります。実施者または実施事務従事者により、鍵のかかるキャビネットやサーバーなどに保管し、第三者が容易に閲覧できないような環境にしておかなくてはなりません。また、クラウド型健康管理システムなどの電子媒体での保存も認められています。なお、面接指導の結果については、以下の内容が含まれている必要があります。
ストレスチェックを行うにあたっては、以下の3つの項目について注意しましょう。
ストレスチェックの結果は個人情報にあたります。また、前述のようにストレスチェックの結果によって不当な人事が行われないよう、人事権を持つ職員が従業員本人の許可を得ず、勝手に内容を閲覧することは禁じられています。そのため、実施者と実施事務従事者は、第三者に結果を漏えいしない守秘義務を守ることはもちろん、担当者であっても人事権を持つ職員に勝手に結果を漏らさないよう注意しなくてはなりません。
どうしても社内でストレスチェックの結果に関する情報を共有する必要が生じた際には、本人の同意を得た上で、必要最小限の範囲にとどめましょう。ストレスチェックの結果を不正に取り扱ったことが発覚した場合、守秘義務違反として刑罰の対象とされることもあります。
従業員がストレスチェックの結果を元に医師の面接指導を申し出たり、面接指導の結果、就業上の措置が必要になったりしたからといって、不利益な扱いをしてはなりません。ストレスチェックの結果や面接指導の結果によって解雇や雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換、職位の変更などを行うことも禁じられています。
また、逆にストレスチェックを受けないこと、ストレスチェックの結果を企業側へ知らせないこと、高ストレス者と判定されたけれど面接指導の申し出を行わないこと、などによって不利益な扱いをすることももちろん禁止です。ストレスチェックや面接指導は、あくまでも企業側が従業員の心理的負担を減らし、心身の健康を保つための取り組みなため、ストレスチェックに関連して従業員に不利益な扱いをすることは認められません。
ストレスチェックとは、従業員が自身のストレス度合いに気づき、セルフケアや医師の面接指導を受けるために行う検査のことです。ストレスチェックは一定規模以上の事業場で義務化されましたが、その背景には精神障害による労働災害の増加や、仕事などによるストレスを感じる人が半数を超えていることなどがあります。 ストレスチェックは、常時50人以上の従業員を使用する事業場で義務化されています。ストレスチェックを行ったかどうか、その後どのような対応をしたかはクラウド型健康管理システムを使ってペーパーレス、一元化するとどこからでもアクセスでき、保存・保管に場所もとらず便利です。
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