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特定健診・特定保健指導とは?違いや実施の流れを詳しく解説!

作成者: Growbase編集部|10/30/23 1:06 AM

特定健診とは、生活習慣病の予防のために行う40歳~74歳を対象とした健診のことです。そして特定健診の結果、指導が必要だと判断された方を対象に、特定保健指導を行います。いずれも従業員の生活習慣病を予防し、健康を保つことが目的です。

特定健診や特定保健指導の実施義務を負うのは健康保険組合等の保険者ですが、従業員の健康管理のためには、事業者も特定健診と特定保健指導の双方について正しく理解することが大切です

本記事では、特定健診から特定保健指導に至るまでの流れと、ステップごとの詳細について、厚生労働省のマニュアルをもとに解説します。特定健診と特定保健指導を適切に実施するために、ぜひ参考にしてください。

特定健康診査(特定健診)・特定保健指導とは?

まずは、特定健診と特定保健指導の概要と、それぞれの実施義務について解説します。

特定健診とは

特定健診は、正式名称を特定健康診査と言い、40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者を対象とした健診のことです。

特定健康診査では、生活習慣病の予防のために、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健診を行います。2008年4月から、医療保険を運営する団体や組織である医療保険者(国民健康保険・被用者保険)には、内蔵脂肪型肥満に着目した特定健康診査の実施が義務づけられました。

特定保健指導とは

特定保健指導とは、特定健康診査の結果、指導が必要と判断された方に対して行われる保健指導のことです。

生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善により生活習慣病を予防すべきと判断された方を対象に、保健師や管理栄養士といった専門スタッフが生活習慣を見直すサポートを行います。

特定健診・特定保健指導の実施義務

高齢者医療確保法で、特定健診の実施義務は、医療保険者(国民健康保険・被用者保険)が負うものとされています

(特定健康診査)

第二十条 保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、四十歳以上の加入者に対し、特定健康診査を行うものとする。ただし、加入者が特定健康診査に相当する健康診査を受け、その結果を証明する書面の提出を受けたとき、又は第二十六条第二項の規定により特定健康診査に関する記録の送付を受けたときは、この限りでない。

特定保健指導の実施義務についても、保険者に課せられた義務となっています。

(特定保健指導)

第二十四条 保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、特定保健指導を行うものとする。

出典:e-Gov法令検索 昭和五十七年法律第八十号 高齢者の医療の確保に関する法律

このように、特定健診と特定保健指導の実施義務を負うのは、事業者ではなく保険者であることを理解しておきましょう。

事業者は、労働安全衛生法により、定期健診や雇い入れ時健康診断といった事業者健診の実施が義務付けられています。しかし、特定健診や特定保健指導の実施については努力義務です。なお、対象者の受診は任意とされています。

特定健診・特定保健指導を実施する流れ

特定健診と特定保健指導を実施する流れは、以下のとおりです。

  1. 特定健診を実施する
  2. 特定保健指導対象者を選定する
  3. 特定健診の結果通知表を出力・送付する
  4. 特定保健指導を実施する(動機付け支援・積極的支援)
  5. 特定保健指導を終了する

ここでは、各ステップについて解説します。

特定健診を実施する

特定健診では、具体的に以下のような項目について検査を行う必要があります。

<必須健診項目>

  • 質問票(服薬歴、喫煙歴 等)
  • 身体測定(身長、体重、BMI、腹囲)
  • 理学的検査(身体診察)
  • 既往歴、自覚症状、他覚症状
  • 血圧測定
  • 血液検査
  • 脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールまたはNon-HDLコレステロール)
  • 血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c やむを得ない場合には随時血糖)
  • 肝機能検査(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP))
  • 尿検査(尿糖、尿蛋白)

<詳細な健診項目>

  • 心電図
  • 眼底検査
  • 貧血検査(赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値)
  • 血清クレアチニン検査

特定健診の検査項目は、事業者が実施する健康診断の多くと項目が一致しています。そのため、事業者が実施する定期健康診断結果のうち、特定健診項目分を健康保険組合が受け取ることで、特定健診を受けたことになるのです。

すでに健診を行っている項目については、特定健診として再度実施する必要はない点を理解しておきましょう。特定健診の項目に欠損がある場合は、欠損分を保険者が追加実施します。

特定保健指導対象者を選定する

保険者は特定健診の結果に基づき、メタボリックシンドロームのリスク数を基準に特定保健指導対象者を選定します。ここで言うリスクとは、以下の項目のことです。

1.内臓脂肪型肥満→腹囲とBMIで内臓脂肪蓄積のリスクを判定する。

  • 内臓脂肪型肥満A→腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
  • 内臓脂肪型肥満B→腹囲:男性85cm未満、女性90cm未満かつBMI:25以上

2.追加リスク→健診結果・質問票より追加リスクをカウントする

   (1)血糖・・・空腹時血糖値※100mg/dl以上またはHbA1c 5.6%(NGSP値)以上
   (2)脂質・・・中性脂肪150mg/dl以上またはHDLコレステロール40mg/dl未満
   (3)血圧・・・収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上
   (4)喫煙歴・・・(1)~(3)のリスクが1つでもある場合にリスクとして追加

   ※H30年4月1日以降の健診では、やむを得ない場合、随時血糖を用いる。

まずは、内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)のリスクを判定します。上記のA・Bどちらにも該当しない場合は、特定保健指導の対象外です。AまたはBに該当する場合は、次の追加リスクの判定に移ります。

追加リスクでは、健診結果と質問票から、血糖・脂質・血圧の項目のうち、該当するものをカウントします。1つも該当するものがない場合は、特定保健指導の対象外です。当てはまるものが1つでもある場合は、喫煙歴を確認します。

内臓脂肪型肥満がAかBか、追加リスクが何個あるかによって、特定保健指導の内容が変わります。

特定健診の結果通知表を出力・送付する

保険者は、特定健診の結果を受診者に知らせるために、結果通知表を出力します。

厚生労働省の「特定健診・保健指導ハンドブック」には、特定健康診査受診結果通知表の様式例が記載されています。結果通知表は、特定のフォーマットで出力する必要はありません。しかし、健診結果に関する以下の項目については必ず記載することとされています。

  • 身体計測(身長・体重・腹囲・BMI)
  • 血圧
  • 血中脂質検査
  • 肝機能検査
  • 血糖検査
  • 尿検査
  • 貧血検査(実施した場合)
  • 心電図検査(実施した場合)
  • 眼底検査(実施した場合)
  • 血清クレアチニン検査(実施した場合)
  • メタボリックシンドローム判定

そのほか、特定健康診査の結果を踏まえた医師の所見や、貧血検査、心電図検査、眼底検査および血清クレアチニン検査を実施した場合はその理由について、「医師の判断」の欄に記載されます。

結果は、紙で印刷して本人に直接手渡し、あるいは送付が簡単ですが、長期保管や分析を行う点を鑑みると、データで出力して送付するのが効率的と言えるでしょう。

特定保健指導を行う

特定保健指導は、メタボリックシンドロームのリスク数に応じて、「動機付け支援」と「積極的支援」の2つのタイプに分かれます。ここでは、動機付け支援と積極的支援の対象者と、具体的なサポート内容について解説します。

なお、特定健康診査の結果やそのほかの事情により、受診者の健康保持増進のために必要があると認めるときは、受診者に対し、適切な保健指導を行うよう努めることが求められます。

動機付け支援

動機付け支援は、内臓脂肪型肥満Aで追加リスクが1つ、内臓脂肪型肥満Bでリスクが追加1〜2つの方を対象に実施されるものです。

動機付け支援では、医師や保健師などの専門家が、対象者と生活習慣を振り返ったうえでライフスタイルにあった目標を設定し、生活習慣を改善できるようサポートします。動機付け、という名前のとおり、生活習慣を改善するきっかけを提供するものであり、支援は原則1回の面接支援のみとされているのが特徴です。

具体的には、個別面談やグループ学習を実施したのち、6ヶ月後に面接や電話、手紙などで改善状況や体重・腹囲などの変化を確認します。対象者の状況に応じて、さらに独自のフォローアップを行うことも可能です。

積極的支援

積極的支援は、内臓脂肪型肥満Aでリスクが2つ以上、内臓脂肪型肥満Bでリスクが3つ以上の方を対象に実施されるものです。

ただし、前期高齢者(65歳以上75歳未満)については、積極的支援の対象となった場合でも動機付け支援の対象となります。また、2年連続して積極的支援に該当しても、1年目に比べて状態が改善(※)していれば、2年目の特定保健指導は、動機付け支援相当とすることが可能です。

(※)BMI30未満の場合:腹囲1㎝以上かつ体重1キロ以上減少、BMI30以上の場合:腹囲2㎝以上かつ体重2キロ以上減少

動機付け支援と同様、サポートを行うのは医師や保健師などの専門家です。対象者と生活習慣を振り返ったうえでライフスタイルにあった目標を設定し、改善に向けて行動を続けられるよう、継続的にサポートを行います。

初回面接から3ヶ月以上支援を行うこととされており、動機付け支援よりも、中長期的かつ継続的な支援を想定しているのが特徴です。

特定保健指導を終了する

動機付け支援・積極的支援ともに、規定の期間までで特定保健指導を終了できます。ただし、計画通りの結果が出ていない場合や、対象者が必要とする場合には継続することも可能です。

特定健診・特定保健指導を実施する際のポイント

特定健診と特定保健指導を実施する際は、以下のポイントについて理解しておきましょう。

  • 事業者は保険者に協力することが求められる
  • 治療中の方は特定保健指導の対象外となる
  • 特定保健指導は、基準に該当するもの全員に実施する必要はない
  • 受診者全員に有益な情報提供を行う

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

事業者は保険者に協力することが求められる

事業者は特定保健指導の実施義務を負いませんが、特定保健指導を円滑に実施できるよう、保険者に協力することが求められます。

具体的には、対象者が就業時間中に保健指導を受けられるよう時間を確保する、就業時間中の特定保健指導に要した時間についての賃金取扱いについて配慮する、といった協力が求められるのです。

治療中の方は特定保健指導の対象外となる

特定保健指導の対象となる基準を満たしている方のうち、糖尿病、高血圧症または脂質異常症の治療にかかる薬をすでに服用している方については、特定保健指導の対象外となります。

これは、すでに医師の指示のもとで治療を進めているため、重ねて保健指導を行う必要性はないと判断されるためです。

特定保健指導は基準に該当する者全員に実施する必要はない

前述のとおり、特定保健指導の対象者は、健診結果を利用し、メタボリックシンドロームのリスク数を基準に選定されます。しかし、必ずしも基準に該当する方全員に特定保健指導を行う必要はない点がポイントです。

保健財源は限られているため、全員に実施することが難しい場合は、生活習慣の改善により、生活習慣病の予防効果が大きく期待できる方を優先することとされています。そのため、基準に該当する全員に特定保健指導を実施する必要はありません。

たとえば、保健指導を受けることに消極的な方や、毎年保健指導を実施しているものの改善が見られない方については、優先度を低くできます。

受診者全員に有益な情報提供を行う

特定健診の結果は、保険者から受診者に通達されます。

このとき、ただ結果を返却するのではなく、結果に関する解説や、受診者それぞれが抱える健康上のリスクを説明するなど、有益な情報提供を行うことが望ましいとされています。特定健康診査を実施することにより、受診者自ら健康状態を理解してもらうことが大切であるためです。結果返却時に、継続して健診を受けるよう伝えることも重要です。

なお、特定健診の実施を外部機関に委託している場合は、スムーズに結果を送付できるよう、委託先の健診機関から受診者に結果を通知するのが望ましいとされています。

まとめ:特定健診と特定保健指導で従業員の健康管理を行う

従業員の健康を保つために実施が義務付けられている特定健診は、40歳以上74歳以下の被保険者・被扶養者を対象に、メタボリックシンドロームに着目した健診を行うことです。また、健診の結果、生活習慣の改善が必要であると判断された方を対象に特定保健指導を行うことで、生活習慣の改善をサポートすることが求められます。

特定健診と特定保健指導は、事業者が受診者の健康状態を把握するだけでなく、受診者自ら健康状態を理解してもらうためにも、適切な方法で実施する必要があります。この記事を参考に、特定健診と特定保健指導について理解を深めましょう。

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