多くの企業が働き方改革を進める中、注目を集めているのがウェルビーイングです。
新型コロナウイルスの影響などにより、多様な働き方ができるようになった一方で、ワークライフバランスを重視する方が増えています。
しかしウェルビーイングについては、まだよく知らない方が多く、改善に向けた取り組みを行っている企業は少ないことも事実でしょう。
そこで今回は、ウェルビーイングの意味や経営に与えるメリット、またウェルビーイングを改善するための対策などについて解説します。ぜひ参考にしてみてください。
ウェルビーイングという言葉が注目される一方で「そもそもどんな意味なの?」という方も多いでしょう。ここではウェルビーイングの意味と、注目を集めている背景について解説します。
ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを意味する言葉です。幸福や健康と訳されることもあります。
ウェルビーイングは、個人や組織のパフォーマンスや生活の質に影響するものです。また企業におけるウェルビーイングとは、従業員一人ひとりの幸福が組織にとっても良い方向に働くことを意味します。
近年、日本企業においてウェルビーイングが注目されるようになった背景には、以下のような要因が絡んでいます。
・労働環境の変化
・メンタルヘルスの重要性の認識
・採用難による影響
・法改正と社会的圧力
ここでは、それぞれの要因について確認しておきましょう。
近年、新型コロナウイルスなどの影響もあり、労働環境が急速に変化しました。その結果、過度のストレスや長時間労働、仕事とプライベートのバランスの難しさなどが、従業員のメンタルヘルスや幸福感に悪影響を及ぼすケースが増加傾向です。
これにより、企業は従業員の健康と幸福感を重視する必要性を認識しはじめています。
うつ病やストレスなどの精神的な健康問題が増加していることを理由に、メンタルヘルスの問題が社会的にも意識されるようになっています。
そのため、企業は従業員のメンタルヘルスケアを含む、総合的なウェルビーイング戦略の重要性を意識するようになりました。
なおメンタルヘルスについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
「メンタルヘルスケアとは?疾患事例、企業の実施メリット、実施方法などをご紹介」
近年、就職・転職市場は完全に売手市場といえます。そのため優れた人材を確保し、長期間にわたってその能力を引き出すためには、働く環境が魅力的であることは重要です。
ウェルビーイングを重視する企業は、従業員の満足度やエンゲージメントを高め、市場における競争力が増すことにより、優れた人材を採用しやすくなります。
労働基準法などの法改正により、過重労働の是正や休暇の取得促進など、労働環境改善が進んでおり、多くの企業が働き方改革を進めている状況です。
また企業に対する社会的圧力も増しており、従業員のウェルビーイングを考慮しない企業は、評判や信頼を損ねる可能性が高いでしょう。
ウェルビーイングは、さまざまな要素が絡みあうことによって構成される点が特徴です。ここでは、ウェルビーイングを構成する要素の代表例を2つご紹介します。
世論調査やコンサルティングを行う米国企業ギャラップ社は、ウェルビーイングを構成する5つの要素を提唱しています。ここでは、それぞれの要素について確認しておきましょう。
キャリアウェルビーイング(Career Wellbeing)は、個々の仕事や職業に関する満足度と充実感のことです。仕事に対する感情的なつながりや達成感、成長の機会などが含まれます。具体的には、仕事上での満足感、やりがいや達成感、ワークライフバランス、職場における良好な人間関係などがキャリアウェルビーイングに関連します。
ソーシャルウェルビーイング(Social Wellbeing)は、人間関係や社会的なつながりの質をさすものです。友人や家族との交流や支援、コミュニティへの参加によって高められます。
他人とのつながりを感じることによって、幸福感やメンタルヘルスの向上が期待できるでしょう。
ファイナンシャルウェルビーイング(Financial Wellbeing)とは、個人の経済的な健全性と安定感をさすものです。自分の経済状況に対する安心感や満足度、将来の財政的な目標を達成するための計画などによって醸造されます。ファイナンシャルウェルビーイングには十分な収入、適切な貯蓄、借金の適切な管理、予期せぬ出費への備えなどが重要です。
フィジカルウェルビーイング(Physical Wellbeing)は、身体的な健康と体調の質をさすものです。健康な生活習慣、運動、栄養、睡眠などがこの要素に含まれます。具体的には、健康な生活習慣や運動、栄養、睡眠、病気予防と健康管理などがフィジカルウェルビーイングに寄与するでしょう。
コミュニティウェルビーイング(Community Wellbeing)は、個人が所属する地域やコミュニティの状態や質に関連するものです。地域の安全性や社会的なつながり、サービスの提供、環境の質などが要素になり得るでしょう。また、コミュニティ内で提供される教育、医療、文化活動などのサービスや環境の質なども、コミュニティウェルビーイングに影響します。
参考:GALLUP/What Is Employee Wellbeing? And Why Does It Matter?
ポジティブ心理学の分野で著名な心理学者であるマーティン・セリングマン博士が提唱するPERMAモデルは、幸福と幸福感を、以下5つの重要な構成要素で表したものです。ここでは、それぞれの内容について解説します。
Positive Emotionとは喜びや楽しみ、幸福、希望などの心地よい感情をさすものです。これらの感情は、人々が心地よさや喜びを感じ、ストレスやネガティブな感情とのバランスを取るのに役立ちます。
Engagementとは仕事や活動に没頭したりやりがいを感じている状態ををさします。日常の活動や仕事に没頭することで、時間を忘れ、自己の能力を最大限に発揮する状態に達することで、Engagementを高めることが可能です。
Relationshipsとは、良好な人間関係や社会的なつながりが個人の幸福感や充実感に与える影響をさします。家族や友人、同僚など、他人との関係性に焦点をあてた要素といえます。
Meaningとは、人生における目的や意味を持つことの重要性のことです。自分の行動や生活に対して価値を見出すことや、自己の存在をより大きな意味につなげることをさします。意味を感じることは、個人の満足感や充実感に深い影響を与えます。
Accomplishmentsとは個人が目標を達成し、成果を上げることによって得られる満足感や充実感のことです。自己の成長や進歩を実感し、努力の結果を享受することを重視するものといえます。人々が目標を達成し、困難を克服して成果を上げたときに感じる満足感や自信から生まれる要素といえるでしょう。
参考:positivepsychology.com/Seligman’s PERMA+ Model Explained: A Theory of Wellbeing
ウェルビーイングを経営に取り入れることによって、企業は以下のようなメリットが得られます。
・従業員のエンゲージメントが向上
・社内の人間関係が改善
・競争力強化による収益増加
・離職率の低下
・採用率の向上
ここでは、それぞれの内容について解説します。
ウェルビーイング経営に取り組むことで、従業員は自身の健康や幸福に関心を持つ環境で働けるため、仕事に対するエンゲージメントを向上させることが可能です。充実感と満足感は生産性や創造性を向上させ、結果として企業全体の成果にポジティブな影響を与えるでしょう。
ウェルビーイング経営の導入によって、従業員同士が健康や幸福について共通の関心を持つことで、相互の理解が深まる点もメリットです。従業員同士が協力できる環境を醸成し、意欲的なチームワークと円滑なコミュニケーションの促進につながります。
ウェルビーイング経営が従業員の健康と幸福を向上させることで、創造性や生産性が向上します。より満足度の高い従業員は、高品質なサービスや商品の提供に貢献し、競争力を高めて顧客の信頼を勝ち取ることが可能です。
ウェルビーイング経営によって従業員のストレスや不満が軽減されることで、離職意思や退職率が低下します。健康的な職場環境は従業員の長期的かつ意欲的な活動を促進し、知識や経験の蓄積を支援するでしょう。
従業員の満足度や会社の評判が高まることによって、優秀な人材の応募や採用率を向上させる効果があるでしょう。ウェルビーイング経営によって従業員の満足度が向上すると、会社の評判も向上します。これにより、優秀な人材が魅力的な職場環境を求めて応募しやすくなり、採用の質と量が増加する効果を期待できる点がメリットです。
社内のウェルビーイングを改善する方法は、さまざまあります。しかし、具体的に何をすればよいのかわからないケースもあり得るでしょう。ここでは、ウェルビーイングを改善するための具体的な対策をご紹介します。
メンタルヘルスと労働環境の改善は、従業員の心身の健康を支える重要な要素です。休憩・休暇取得の促進や福利厚生の充実は、リフレッシュとリラックスの機会を提供し、ストレスや過労を軽減します。また、カウンセリングやメンタルケアのサービスを提供することで、従業員は精神的なサポートを受けられ、心の健康を維持する一助となるでしょう。
働き方改革の推進によって実現される効率的な業務遂行は、従業員の負担を軽減しワークライフバランスを向上させます。業務効率化の取り組みによって、生産性が向上する一方で、過重な労働時間や負担を減少させることが可能です。バランスの取れた働き方は、従業員のストレスを減少させ、健全な労働環境を築くサポートにつながります。
良好なコミュニケーションは、組織内の協力と信頼を促進し、ウェルビーイングを向上させる重要な要素です。従業員同士や上司と部下の間でオープンなコミュニケーションの機会を増やすことで、意見の交換や問題の解決が円滑に行われます。フィードバックや相談の仕組みを整えることは、従業員が自身の声を届けやすくし、組織全体の改善につながるでしょう。
従業員の声を直接収集し、ウェルビーイングの状況や課題を把握する効果的な手段が、従業員サーベイです。定期的なアンケートやインタビューを通じて、従業員のニーズや意見を理解し、必要な調整や改善を行えます。データの分析によって、具体的な改善施策を導き出すことが可能です。
ツールやシステムの導入は、従業員のウェルビーイングをサポートする手段として重要です。健康管理や自己啓発を支援するアプリやプラットフォームの導入は、従業員が自分自身の健康やスキル向上に取り組む手助けとなります。これにより、従業員は自己成長を実感し、仕事に対するモチベーションが高まるでしょう。
ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを意味する言葉で、企業においては従業員一人ひとりの幸福が、組織にとっても良い方向に働くことを意味します。ウェルビーイング経営を実践することによって、従業員のエンゲージメントが向上する効果や社内における人間関係の改善、競争力強化による収益増加、離職率の低下、採用率の向上といった効果が期待できるでしょう。
また、そのためには以下のような取り組みの実施も不可欠です。
・メンタルヘルス・労働環境の改善
・働き方改革の推進
・コミュニケーションの活性化
・従業員サーベイの実施
・ツール・システムの導入
なお、ウェルビーイング経営に役立つツールをお探しの場合は「Growbase(旧:ヘルスサポートシステム)」の導入がおすすめです。
Growbaseは、産業保健や健康管理業務の効率化を実現する「クラウド型健康管理システム」です。健康診断結果やストレスチェックの結果、勤怠データなど、バラバラに取得しているデータを一元管理できます。
また、従業員の心と身体の健康課題を可視化し、メンタルヘルスケアにも有効です。さらに、他にも以下のような機能があります。
・健康診断結果登録
・面談管理
・ストレスチェック
・長時間労働管理
・データ集計・出力
・アンケート
・従業員管理
Growbaseは従業員の健康にかかわる業務の円滑な運用をサポートし、従業員の健康管理を促進します。
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<監修者プロフィール>
医師、公認心理師、産業医:大西良佳
医学博士、麻酔科医、上級睡眠健康指導士、セルフケアアドバイザー
北海道大学卒業後、救急・在宅医療・麻酔・緩和ケア・米国留学・公衆衛生大学院など幅広い経験からメディア監修、執筆、講演などの情報発信を行う。
現在はウェルビーイングな社会の実現に向けて合同会社ウェルビーイング経営を起業し、睡眠・運動・心理・食に関するセルフケアや女性のキャリアに関する講演や医療監修も行っている。