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新人・異動者の76.6%が経験する「リアリティショック」

作成者: Growbase編集部|6/15/26 11:43 AM

つまずきが増える4月に、会社ができること

4月は新入社員の受け入れと人事異動が重なり、職場の空気が一気に変わります。毎年この時期になると、「欠勤や体調不良が増える」「立ち上がりが遅れて戦力化に時間がかかる」「早期離職が出てしまう」そんな悩みを抱える企業も少なくないのではないでしょうか。

新人・異動者が直面しているのは、仕事の進め方、人間関係、評価の仕組み、職場の文化に慣れるまでの過程にある「適応のハードル」です。ここを捉え、職場の受け入れ方まで含めて整えることで、結果として不調や離職の予防につながります。

本記事では、新人・異動者の健康管理を「組織への適応」という観点から捉え直し、人事が持つべき視点と職場への働きかけ方を整理します。

1.76.6%」という数字が示すもの

パーソル総合研究所が2019年に実施した「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」によれば、入社後に何らかのリアリティショックを経験した新入社員は76.6%に上っています。

「そんなものだろう」と受け流したくなる数字でもあります。しかし同調査では、リアリティショックが高い群は低い群に比べ、会社満足度が大きく低下し、3年目まで満足している割合が約5分の1まで下がることが示されています。「当たり前だから仕方ない」と放置することは、3年後の定着や戦力化に影響し得る課題を見過ごすことと同義です。

なお、新入社員がギャップを感じやすい項目としては、「昇進・昇格のスピード」「仕事で与えられる裁量の程度」「仕事から得られる達成感」「給料・報酬の高さ」などが挙げられています。多くは「もっとバリバリやれると思っていた」という、楽観的な期待が裏切られるパターンです。

2. リアリティショックの型と、2つのズレの向き

リアリティショックは「入社前の期待」と「入社後の現実」のズレですが、前述のとおり、ズレが生じる領域はさまざまです。実務で扱うには、「どこでズレたか」に加え、もう一段踏み込む必要があります。

甲南大学の尾形真実哉氏(書籍:若年就業者の組織適応)は、リアリティショックを「どの領域でズレたか」だけでなく、「ズレがどちら向きに起きたか」で捉えることの重要性を示しています。

ひとつは、楽観的な期待が、現実によって裏切られる既存型です。「もっと裁量があると思ったのに」「もっと評価されると思ったのに」といったギャップとして現れます。

もうひとつは、入社前は厳しさを覚悟していたのに、実際には拍子抜けして「物足りない」と感じる肩透かし型です。「もっと鍛えられると思っていた」「もっとハードに成長できると思っていた」といった文脈で語られます。

同じ職場でも、この2つは同時に起こり得ます。だからこそ、リアリティショック対応を「ギャップを埋める」で一本化せず、ズレの向きを見極めると、打ち手が外れにくくなります。  

3. ポジティブ・サプライズという逆転の発想

リアリティショックが「悪い意味での期待はずれ」だとすれば、「良い意味での期待はずれ」も起こり得ます。これがポジティブ・サプライズです。

「思っていたより職場の雰囲気が良かった」「想像以上に先輩が丁寧に教えてくれた」——こうした経験は、組織への信頼や意欲を押し上げ、結果として適応を加速させます。

つまり、リアリティショックを減らすだけではなく、ポジティブ・サプライズを増やすことも戦略になります。

具体的には、採用段階で「最初の1年は大変」と率直に伝えたうえで、入社後は手厚い支援体制を用意する。配属先についても「忙しい部署です」と伝えておきつつも、やりがいのある業務を任せ、コミュニケーションを丁寧に行う。採用時に実態を正直に伝えることが前提であり、そのうえで受け入れ体制を「期待以上」に整えることがポイントです。

4. 新人の「聞けない」問題

リアリティショックと並んで、適応を阻害する代表的要因が「聞けない問題」です。研修では「分からないことは聞いてください」と伝えますが、実際には聞いてこない新人が少なくありません。

援助要請(help-seeking)の心理学研究では、質問や相談を妨げる障壁として次が知られています。

・「頼ったら負け」という意識自分で対応できないことを認める自尊心への脅威

・「迷惑をかけたくない」という配慮相手の負担を過大に見積もる

・「何が分からないか分からない」状態つまずき点を自分で特定・言語化できないと、そもそも聞く『入口』に立てない

特に自尊心への脅威や配慮が強く働くと、「解決できない」時に「解決できる人」には聞かず、同じく困っている人に聞いてしまうことがあります。新人同士の相談が増えるメリットもありますが、物事の解決にはつながらないことがあります。「聞いてこないから大丈夫」ではなく、「聞いてこないこと自体がリスクのサイン」になり得ることを職場は自覚する必要があるでしょう。

5. ベテラン異動者の「聞けない」問題

異動者、特に中堅以上には別の「聞けなさ」があります。新入社員は「分からないから聞く」が許容されますが、10年、15年のキャリアがある人が新しい部署に入ると、「この程度は知っていて当然」という暗黙の圧力が生まれます。年下の同僚に教えを請う場面では、心理的ハードルはさらに上がります。

経験があるから大丈夫と見られがちな人材ほど、前部署の成功体験が新部署では通用しない、というズレに直面します。経験を積んだ人ほど今までのやり方を手放しづらい。ストレスを抱えながら、ベテランであるがゆえに弱みを見せにくいこの構図は、メンタル不調のリスク要因として軽視できません。異動者に対しては、前任者との引き継ぎ面談を設計する、新部署での相談相手を明示するなど、経験者だからこそ必要な受け入れの工夫があります(具体策はセクション8で整理します)。

6.「自己完結性」という視点——組織が対処すべきショックとは

すべてのショックに組織が対処すべきというわけではありません。尾形氏の研究によれば、リアリティショックには「自己完結性」(自分の力で乗り越えられる度合い)という軸があります。

「自分のスキルや経験が足りなくて思うように仕事ができない」というショックは、本人の努力である程度解消できます。一方、「会社の雰囲気が悪すぎてどうしようもない」「上司がパワハラ気質で相談できない」といったショックは、本人の力だけでは解消できません。後者は組織として対処しなければ離職につながりやすいことがわかっています。

把握すべきは、新人や異動者が感じているショックの「質」です。面談やサーベイで不満や困りごとを聞いたとき、それが本人の努力で解消し得るものか、組織や職場環境に起因するものかが重要です。

7. 体調の変化への気づき:メンタルだけではない適応のサイン

本人の力では解消しにくいショックを早期に発見するうえでも、体調の変化は重要なサインです。ここまでリアリティショックや「聞けない」問題を見てきましたが、これらの適応課題は、メンタルの不調としてだけでなく、身体症状として表れることも少なくありません。

睡眠の乱れ、疲労感、頭痛や胃腸症状、風邪をひきやすい、肩や腰の悪化——これらは、環境変化に体が追いついていないサインになり得ます。4月は生活リズムが崩れやすく、通勤や業務負荷の変化も重なります。

体調の変化に早めに気がつけば、欠勤やパフォーマンス低下の連鎖を止めやすくなります。「メンタル不調の予防」と構えるより、「体調の変化を環境適応のサインとして捉える」というスタンスのほうが、本人も周囲も声を上げやすくなります。

8. つまずきを減らす、4月の会社側の受け入れ設計

ここまで見てきたとおり、リアリティショックや「聞けない」問題、体調変化は、本人の努力だけで解決できるものではありません。新人・異動者のつまずきは、本人の問題ではなく「受け入れの条件」が整っていないときにも増えます。

会社がやるべきことは、施策を増やすことではなく、4月に必ず起きるズレを前提に、受け入れの条件を整えることです。ポイントを4つに絞ると、以下の表の通りです。

目的 会社がやる具体例 いつやるか
 期待値をそろえる   任せる範囲、求める到達点、評価やフィードバックのタイミングを共有する(誤解が起きやすい点を言語化)   配属前〜初週 
 最初の仕事を設計する   立ち上がりの業務を「小さく区切る」(最初の2〜4週間で、何ができれば合格か)   初週〜2週 
 相談の相手を明確にする   困ったときの相談窓口を明確にする(業務、手続き、体調など、相談先を名指しで示す)   初日 
 節目で状態を点検する   定点確認を予定化する(業務負荷、人間関係、睡眠や疲労などの変化を確認)   2週・1か月・3か月 

 

9.「抜け漏れなく」フォローするための管理基盤

新人・異動者を適切に支えるには、属人的な対応だけでは足りません。対象者の一覧化、リスク評価、面談やフォロー履歴の記録、経年データの蓄積が必要です。

異動者については、例えば、初めての異動か、転居を伴うか、管理職への昇進を伴うかといったデータも、重点化や予防策の検討につなげます。

ここで重要なのは、健康診断後のフォロー状況、通院継続の必要がある人の把握、生活リズムの乱れや疲労の訴えなど、フィジカル面の情報も適応のハードルを察知するためのサインとなり得ることです。

その意味で、健康管理情報を一元化し、対象者の抽出からフォロー履歴の記録、集計までを標準化できる基盤は、4月のフォローの抜け漏れを減らす現実的な選択肢になり得ます。当社が提供する「Growbase」は、点在しがちな健康情報を一元化し、ハイリスク者の抽出から面談調整までを効率化する健康管理システムです。

加えて、実効性のある面談や指導体制を整えたい企業様には、メンタルヘルスに強い産業医を選定・ご紹介する「産業医紹介サービス」を併せてご提案しています。「Growbase」によるデータ活用と、経験豊富な「産業医」の知見。このITとプロフェッショナルの掛け合わせにより、変化の激しい時期における従業員の心身の健康を、より強固に守ることが可能になります。

10.おわりに

新人・異動者の76.6%が経験するリアリティショック。ベテラン異動者の経験があるからこそ聞けないという障壁。いずれも、健康問題につながりかねない「適応のハードル」です。

4月以降の定着や戦力化のために、自社の新人・異動者は、どのような適応のハードルに直面しているのか。その課題に対処するための仕組みは整っているか。この問いに答えられる状態を作ることが、4月の新人・異動者のつまずきをフォローするための第一歩です。

出展元:

就職活動と入社後の実態に関する定量調査 結果報告書|パーソル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/reality-shock.pdf

若年就業者の組織適応|白桃書房
https://www.hakutou.co.jp/book/b502623.html

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<監修者プロフィール>
 佐々木 規夫


産業医科大学医学部卒業。東京警察病院を経て、HOYA株式会社の専属産業医及び健康推進グループ統括マネジャーとして健康管理に従事。現在は上場企業や主要官庁の産業医として勤務する傍ら、精神科医を兼務している。

<資格>
・医師
・医学博士
・日本産業衛生学会産業衛生専門医・指導医
・社会医学系指導医
・日本精神神経学会精神科専門医
・精神保健指定医
・労働衛生コンサルタント