安全衛生委員会は、一定の条件を満たす事業所での設置が義務付けられています。とはいえ、自社に安全衛生委員会の設置義務があるかどうかわからないということもあるでしょう。この記事では、安全衛生委員会とは何か、設置基準、審議内容などをわかりやすく解説します。安全衛生委員会の設置が必要となった企業の担当者や安全衛生委員会のメンバーに選出された人事・総務部の方は、ぜひ参考にしてください。
安全衛生委員会は、労働安全衛生法に基づき、一定の規模に該当する事業場において設置しなければならないものです。「衛生委員会」と「安全委員会」を統合したものが安全衛生委員会であり、それぞれの委員会は設置しなければならない条件が業種や常時使用する労働者の人数によって異なります。また、委員の構成や調査審議事項も異なるため、どちらの委員会を設置しなくてはならないのか、正しく把握しておかなくてはなりません。
安全衛生委員会は、労使(=労働者と使用者)が一体となって労働者の危険又は健康障害を防止することを目的に設置されます。
安全衛生委員会設置の義務が定められた背景には、労働者の健康被害や労働災害が起こったことが挙げられます。それまでは多くの企業が環境整備のために様々な措置を講じていましたが、環境整備の措置が現場の状況に適合していなかったことにより、労働者が健康被害や労働災害に見舞われました。労働者の健康と安全を守るには、企業が一方的な措置を講じるのではなく、労使の間でいかに労働災害を防いでいくかを意見交換しなくてはならなくなったのです。
そこで、1972年6月に労働安全衛生法が公布され、一定の基準を満たす企業には安全衛生委員会の設置が義務付けられました。安全衛生委員会は現場の環境をより改善し、労働災害を防ぐために必要な取り組みなのです。
安全衛生委員会は、開催にあたっての3つのルールが存在します。
① 毎月一回以上開催すること ② 委員会における議事の概要を労働者に周知すること ③ 委員会における議事で重要なものに係る記録を作成し、これを3年間保存すること |
先述した通り、安全衛生委員会は労使が一体となって取り組む必要があります。そのため、労働者に委員会の内容がわかりやすく正確に伝わらなければなりません。災害時や緊急時においては、臨時開催も必要になります。
特定の事業場は、法律によって委員会を設置することが義務付けられています。安全委員会と衛生委員会とでは設置基準が異なり、以下に当てはまる事業場はどちらか、または双方を統合した安全衛生委員会を設置しなくてはなりません。なお、安全衛生委員会は、安全委員会を設けなければならない規模・業種の事業場で設置するのが一般的です。
衛生委員会 | 安全委員会 |
常時使用する労働者が50人以上(全業種) | ①常時使用する労働者が50人以上で下記の業種に該当するもの 林業、鉱業、建設業、製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、 運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業 |
②常時使用する労働者が100人以上で下記の業種に該当するもの 製造業のうち①以外の業種、運送業のうち①以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業 |
常時使用する労働者が50人以上いる事業場では、全業種で衛生委員会を設置することが義務付けられています。また、特定の業種では、常時使用する労働者の数によって安全委員会を設置しなくてはなりません。
一方で、常時使用する労働者が50人未満の事業場には、安全委員会および衛生委員会設置の義務はありません。しかし、委員会を設けていない事業者は、安全または衛生に関する事項について労働者の意見を聴くための機会を設けるようにする必要があります。
衛生委員会 | 安全委員会 |
1. 総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者(議長:1名) 2. 衛生管理者 3. 産業医 4. 衛生に関し経験を有する労働者 |
1. 総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者(議長:1名) 2. 安全管理者 3. 安全に関し経験を有する労働者 |
議長以外の委員については、事業者が指名します。そして、議長以外の委員の半数を、労働者の過半数で組織する労働組合(過半数で組織する労働組合がなければ労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づき事業者が指名しなければなりません。
また、委員会の構成員の人数における定めはなく、事業場の規模や業務の実態に基づき、適宜決定するものとされています。
衛生委員会 | 安全委員会 |
1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。 2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。 3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。 4. 衛生に関する規程の作成に関すること。 5. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。 6. 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。 7. 衛生教育の実施計画の作成に関すること。 8. 化学物質の有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。 9. 作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。 10. 定期健康診断等の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。 11. 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。 12. 長時間労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。 13. 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。 14. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。 |
1. 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。 2. 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。 3. 安全に関する規程の作成に関すること。 4. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること。 5. 安全衛生に関する計画(安全に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。 6. 安全教育の実施計画の作成に関すること。 7. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は産業安全専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の危険の防止に関すること。 |
衛生委員会では労働者の衛生や健康に関連する事項について審議しますが、安全委員会では労働者の安全や危険に関連する事項について審議します。
安全衛生委員会設置の際には、労働安全衛生法に基づいて委員を選出します。各メンバーの役割や選出するときの注意点を把握しておきましょう。
安全衛生委員会のメンバーは、特定の資格保有者だけでなく職場の状況を把握している人が選任されます。特に、総括安全衛生管理者や衛生管理者などに選出された人事・総務部の担当者は、従業員の健康情報を適切に管理したうえで職場の状況をまとめる必要があるということです。
しかし、50人以上もの従業員の健康診断結果やストレスチェックデータ、就労データなどを紙ベースで管理していては、職場の状況をまとめるのに手間がかかるだけでなく、データの取り違えや紛失などの恐れがあります。国で義務付けられるほど重要な安全衛生委員会において、従業員の安全や健康に関する情報は正確でなくては意味がありません。
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労働災害は、近年において大きな社会問題となっています。労働者の危険や健康障害を防止するためには労使が一体となった取り組みが必要で、その取り組みこそが安全衛生委員会の設置や開催になります。安全衛生委員会は、従業員が安心して働き続けられる職場作りのために必要不可欠なものなのです。安全衛生委員会の設置が必要になった事業所は、早めに委員会設置に向けて準備をしましょう。適切なメンバーを選出したうえで有意義な委員会となるよう、運営していくべきです。
<監修者プロフィール>
医師、公認心理師、産業医:大西良佳
医学博士、麻酔科医、上級睡眠健康指導士、セルフケアアドバイザー
北海道大学卒業後、救急・在宅医療・麻酔・緩和ケア・米国留学・公衆衛生大学院など幅広い経験からメディア監修、執筆、講演などの情報発信を行う。
現在はウェルビーイングな社会の実現に向けて合同会社ウェルビーイング経営を起業し、睡眠・運動・心理・食に関するセルフケアや女性のキャリアに関する講演や医療監修も行っている。