健康経営が重視されている昨今では、職場の安全管理や衛生管理の重要性がますます高まっています。安全衛生管理を最適化する際に役立つのが、「安全衛生計画」です。安全衛生計画を立て、実施事項やスケジュールなどを明確化することで、安全衛生管理に対する目標を達成しやすくなります。
この記事では、安全衛生計画について、概要やメリット・立て方や計画書の作成方法などを解説します。また、目標達成のために活用したいコンサルタントや、健康経営の取り組みを推進する便利なシステムについても紹介します。安全衛生に配慮した職場作りを進めたい担当者は必見です。
安全衛生計画とは、安全衛生目標を達成することを目的に、安全衛生管理活動についての実施事項や日程などを定めるものです。具体的には、以下のような内容が含まれます。
安全衛生計画は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、安全衛生に関する取り組みの質を向上させるために、厚生労働省や各都道府県の労働局が、安全衛生計画の作成を推奨しています。
安全衛生計画を作成することには、以下のようなメリットがあります。
それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。
安全衛生計画を立てるうえで、まずは安全衛生方針を表明する必要があります。企業のトップが関係者に対して方針を表明することで、安全衛生管理に関するポリシーが明確化され、経営理念の1つになるのです。
安全衛生方針は、関係者に対する約束事です。安全衛生方針を表明することで、トップの安全衛生管理に対する責任意識が高まることが期待されます。
安全衛生計画では、実施目標を具体化し、スケジュールを立てることが必要です。実施目標を数値で立てたり、具体的なスケジュールに落とし込んだりすることで、安全衛生に関する取り組みが実行しやすくなります。
また、計画を立て、実行して定期的に評価・見直しを行うことで、安全衛生水準を向上させるためのPDCAサイクルを回すことができます。PDCAサイクルを回して改善につなげられるのは、大きなメリットです。
安全衛生計画は、以下の3つのステップで作成しましょう。
ここでは、目的ややり方などを各ステップごとに解説します。
安全衛生計画では、安全衛生方針を表明する必要があります。厚生労働省の「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」第5条では、「事業者は、安全衛生方針を表明し、労働者および関係請負人その他の関係者に周知させるものとする」と定められています。
安全衛生方針は、事業場の安全衛生に関する基本的な考え方のことであり、計画を立てるうえでのベースとなります。そのため、方針を立てたら関係者に表明する必要があるのです。
安全衛生方針には、以下のような事項を含む必要があります。
次に、安全衛生に関する目標を設定しましょう。目標を立てるにあたって、まずは自社の安全衛生に関する現状を把握する必要があります。厚生労働省のサイトから、簡単に自己診断ができるので、ぜひ利用してみてください。
参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
現状把握や過去の安全衛生状況に関する分析を行ったら、現在の安全衛生における課題や危険性を特定します。そして、それらを解決することを目標として設定します。目標は曖昧な表現を使わず、できるだけ数値を使って具体的に記入しましょう。目標の記載例は以下のとおりです。
目標を設定したら、目標達成のためにやるべき事項と実施スケジュールを立てます。 計画に具体性が出るように、以下の内容を記載しましょう。
安全衛生計画を可視化したものが安全衛生計画書です。計画書には、以下のような事項を記載します。
これらの事項は、基本的には前述の安全衛生計画作成ステップで、それぞれ明らかにする項目です。
特に注意すべき点が、安全衛生管理体制です。安全衛生管理体制の欄には、管理者区分ごとに安全衛生に関する担当者の役職名や氏名を書きます。事業場で働く労働者の数によって、管理区分ごとの記載の有無が以下のように変わるため、注意が必要です。
例えば、事業場に常時70人の労働者がいる場合、管理者の役職は安全管理者・衛生管理者・産業医のいずれかになります。一方、常時100人を超える労働者がいる建設業などの場合は、統括安全衛生管理者と記載します。
また、計画の作成は法律で義務付けられているわけではないため、指定のフォーマットがあるわけではありません。必要な事項を記載すれば、WordやExcelなど、好きな形式で作成できます。
安全衛生計画書の提出は必須ではありません。しかし、各事業場における取組の好事例の収集などに活用されるため、作成したら所轄の労働基準監督署へ提出するのが望ましいです。
安全衛生計画は、作成して終わりではありません。定期的に見直しを行い、安全衛生状況のさらなる改善につなげる必要があります。特に、以下のような場合は見直しが必要です。
安全衛生計画を実施し、目標を達成するために役立つ取り組みとして、以下の2つが挙げられます。
これらは法律で義務づけられているわけではありません。しかし、安全衛生に関する取り組みを加速させるために、非常に有効な手段です。それぞれについて、以下で詳しく解説します。
労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントは、労働安全・労働衛生のスペシャリストです。労働者の安全衛生水準の向上のため、事業所の安全性や衛生状態を確認し、指導や計画策定を行う国家資格です。
労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントの選任に、法的な義務はありません。しかし、活用することで労働環境の最適化がしやすくなり、目標達成に近づきます。
今回は、安全衛生計画について、作成するメリットや作成方法、安全衛生計画書の記載方法などを解説しました。安全衛生計画とは、職場の安全衛生に関する目標を達成するため、安全衛生管理活動についての実施事項や日程などを定めるものです。計画を立てることで、職場全体で安全衛生管理に対する意識が高まったり、改善しやすくなったりします。計画の作成は任意ですが、安全衛生管理の徹底のために、ぜひ作成してみてください。
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