労働安全・労働衛生コンサルタントとは?資格や活用メリットを紹介
近年、職場の安全管理や衛生管理の重要性が高まっています。特に健康経営が重視されている昨今では、安全管理や衛生管理を最適化するため、スペシャリストである労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントの活用が注目されています。
この記事では、労働安全コンサルタントと労働衛生コンサルタントについて、業務内容や資格、活用するメリットなどを解説します。また、健康経営の取り組みを効率化できる便利なシステムについてご紹介します。
労働安全・労働衛生コンサルタントとは
労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントは、労働安全・労働衛生のスペシャリストで、厚生労働大臣に認められた国家資格です。企業の安全・衛生水準を向上させるため、事業場に入り、診断や指導を行います。ここでは、労働安全・労働衛生コンサルタントの業務内容や資格について解説します。
労働安全・労働衛生コンサルタントの業務内容
労働安全コンサルタントは、具体的に以下のような業務を行います。
- ・事業所の安全状況の把握・診断
- ・改善のための計画策定・責任者への指導
- ・事業所の安全状況の最適化(規則や点検基準の設定など)
- ・労働安全衛生マネジメントシステムの監査・評価
- ・安全管理教育
- ・外部委託の安全管理者業務
次に、労働衛生コンサルタントは、以下のような業務を行います。
- ・事業所の衛生状況の把握・診断
- ・改善のための計画策定・責任者への指導
- ・事業所の衛生状況の最適化(就業規則や社内規定の設定など)
- ・労働安全衛生マネジメントシステムの監査・評価
- ・衛生管理教育
- ・外部委託の衛生管理者業務
つまり、労働安全・労働衛生コンサルタントは、「事業所の安全・衛生状況を把握・診断し、必要に応じて指導や最適化、関係者への教育などを行う」仕事です。
労働安全・労働衛生コンサルタントの資格
労働安全・労働衛生コンサルタントは、厚生労働省が管轄する国家資格です。資格を取得するためには、厚生労働大臣が指定した「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」が実施する「労働安全コンサルタント試験」あるいは「労働衛生コンサルタント試験」に合格する必要があります。
また、合格後に厚生労働大臣が指定した登録機関である同協会に登録することで、労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントとして活動することができます。
労働安全コンサルタントと労働衛生コンサルタントの違い
労働安全コンサルタントと労働衛生コンサルタントは、扱う業務に違いがあります。
労働安全コンサルタントは、事業者の安全性を確認し、問題があれば指導や計画策定を行うことで、労働災害を未然に防ぐ役割を担います。一方、労働衛生コンサルタントは、事業所の衛生状態を確認し、必要に応じて指導や計画策定を行うことで、労働者の衛生面・健康面の問題を未然に防ぐ役割を担います。
また、労働安全コンサルタントと労働衛生コンサルタントは異なる資格です。そのため、一方を取ったからといってもう一方の仕事をすることはできません。
労働安全コンサルタントと安全管理者の違い
労働安全コンサルタントとよく似た仕事に「安全管理者」があります。労働安全コンサルタントと安全管理者には、大きく以下の3点の違いがあります。
- 1.選任に関する法的義務の違い
- 2.兼任可否の違い
- 3.資格の違い
1点目の「選任に関する法的義務の違い」について、安全管理者は、労働安全衛生法第11条により、常時50人以上の労働者を使用する以下の事業場において選任する義務が生じます。
製造業(物の加工業を含む)、建設業、電気業、林業、鉱業、運送業、清掃業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
また、労働者数に応じて選任すべき安全管理者の人数も増えます。一方、労働安全コンサルタントの選任には法的義務がありません。そのため、労働安全コンサルタントの利用は任意という特徴があります。
2点目の「兼任可否の違い」について、安全管理者は原則1つの事業場に専任となります。そのため、別の事業場との兼任はできません。ただし、安全管理者を2人以上選出し、その中に労働安全コンサルタントがいる場合、この労働安全コンサルタントについては専属でなくても問題ありません。つまり、労働安全コンサルタントは場合によって複数の事業場を兼任することが認められています。
3点目の「資格の違い」について、安全管理者と労働安全コンサルタントは別の資格です。
労働衛生コンサルタントと衛生管理者の違い
労働衛生コンサルタントとよく似た仕事に「衛生管理者」があります。労働衛生コンサルタントと衛生管理者には、大きく以下の3点の違いがあります。
- 1.選任に関する法的義務の違い
- 2.兼任可否の違い
- 3.資格の違い
1点目の「選任に関する法的義務の違い」について、衛生管理者は、労働安全衛生法第12条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任する義務が生じます。また、労働者数に応じて選任すべき衛生管理者の人数も増えます。一方、労働衛生コンサルタントの選任については、労働安全コンサルタントと同じく法的義務がありません。そのため、労働衛生コンサルタントの利用は任意という特徴があります。
2点目の「兼任可否の違い」について、衛生管理者は原則1つの事業場に専任となります。そのため、別の事業場との兼任はできません。ただし、衛生管理者を2人以上選出し、その中に労働衛生コンサルタントがいる場合、この労働衛生コンサルタントについては専属でなくても問題ありません。つまり、労働衛生コンサルタントは場合によって複数の事業場を兼任することが認められています。
3点目の「資格の違い」について、衛生管理者と労働衛生コンサルタントは別の国家資格です。
労働安全・労働衛生コンサルタントと産業医の違い
労働安全・労働衛生コンサルタントは、事業場の安全指導や衛生指導を行う職業ですが、事業者の健康管理を担う産業医も存在します。
労働安全・労働衛生コンサルタントと産業医には、大きく以下の3点の違いがあります。
- 1.選任に関する法的義務の違い
- 2.業務内容の違い
- 3.資格の違い
1点目の「選任に関する法的義務の違い」について、産業医に関しては、労働安全衛生法第13条により、50人以上の労働者を常時使用する事業場は産業医を選任する法的義務を負います。一方、労働安全・労働衛生コンサルタントの専任には法的義務がありません。
2点目の「業務内容の違い」について、産業医は健康診断やストレスチェックなど、労働者の健康について管理・保持増進を図るための措置に関することを職務としています。一方、労働安全コンサルタントは労働場の安全指導、労働衛生コンサルタントは衛生指導と、指導内容が分かれています。
3点目の「資格の違い」について、産業医は医師免許が必要です。一方、労働安全・労働衛生コンサルタントには医師免許は必要ありません。その代わり、労働安全コンサルタント試験や労働衛生コンサルタント試験に合格し、「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」に登録する必要があります。
労働安全・労働衛生コンサルタント試験について
労働安全・労働衛生コンサルタント試験は、決して易しい試験ではなく、誰でも受験できるものではありません。ここでは、どのような試験を突破することで、労働安全・労働衛生コンサルタントになれるかをご紹介します。
受験資格
労働安全・労働衛生コンサルタント試験では、資格によって科目の免除を受けることができます。それぞれの区分に関する特定の資格を有しており、その証明ができれば科目が免除される仕組みです。
また、一般受験の場合は、受験資格の中でも実務経験が必要である点に注意が必要です。 労働安全コンサルタント試験では安全に関する実務経験、労働衛生コンサルタント試験では衛生に関する実務経験があることが要件になります。
安全に関する実務経験の定義は、「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」によると以下の通りです。
「安全の実務とは、事業場の安全管理部門の管理職、安全管理者等のほか生産現場等において安全管理を担当し、所掌する者が下記の業務を行うことを示します。 ① 安全管理計画の企画、立案および運営に関すること ② 生産現場等の具体的な災害防止対策の推進に関すること ③ 安全教育の計画の策定、推進に関すること ④ 労働災害の原因の把握、再発防止対策に関すること ⑤ 労働災害の調査、分析に関すること」 |
また、衛生に関する実務経験の定義は、「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」によると以下の通りです。
「衛生の実務とは、事業場の労働衛生管理部門の管理職、衛生管理者等のほか生産現場等において労働衛生管理を担当し、所掌する者が下記の業務を行うことを示します。 ① 労働衛生管理計画の企画、立案および運営に関すること ② 労働者の健康診断およびその事後措置に関すること ③ 作業環境や作業条件の調査、測定やその改善に関すること ④ 衛生教育計画の作成、運営に関すること ⑤ 有害物中毒等の調査、分析に関すること」 |
試験の内容
労働安全・労働衛生コンサルタント試験のどちらも、筆記試験と口述試験で構成されています。筆記試験には、選択式と記述式両方の回答が必要になります。
試験科目について、労働安全コンサルタント試験の場合は「①機械②電気③化学④土木⑤建築」の5つの区分のうち、いずれか1つを選んで受験します。 労働衛生コンサルタント試験の場合は、「①保健衛生②労働衛生工学」の2つの区分のうち、どちらか1つを選び受験します。
試験の難易度
労働安全・労働衛生コンサルタント試験の合格率は、どちらも例年平均3割程度です。範囲が広く専門性も高いため、難関資格と言えます。労働安全・労働衛生コンサルタントを活用するメリット
ここでは、事業者にとって、労働安全・労働衛生コンサルタントを活用するメリットをご紹介します。
労働環境に問題があると、労働基準監督署や労働者から指摘され、場合によっては事業の継続が難しくなってしまいます。
また、最近では、健康経営が注目されており、事業場の安全管理や衛生管理はますます重要になっています。健康経営とは、労働者等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。「労働者の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として、健康経営優良法人認定制度も注目されています。
このように、健康経営の観点からも、労働環境の安全・衛生面を改善することは重要です。 健康経営の実現は、労働者だけでなく、あらゆるステークホルダーからの信頼獲得や優秀な人材確保に繋がります。 そのため、スペシャリストである労働安全・労働衛生コンサルタントを活用し、安全・衛生状況を最適化することが有効と言えます。
まとめ
今回は、労働安全・労働衛生コンサルタントについて、業務内容や資格、活用するメリットについて解説しました。職場の安全管理や衛生管理は近年ますます重要になってきています。健全な労働環境を構築するために、安全・衛生管理のスペシャリストである労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントを活用することは非常に有効です。
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<監修者プロフィール>
医師、公認心理師、産業医:大西良佳
医学博士、麻酔科医、上級睡眠健康指導士、セルフケアアドバイザー
北海道大学卒業後、救急・在宅医療・麻酔・緩和ケア・米国留学・公衆衛生大学院など幅広い経験からメディア監修、執筆、講演などの情報発信を行う。
現在はウェルビーイングな社会の実現に向けて合同会社ウェルビーイング経営を起業し、睡眠・運動・心理・食に関するセルフケアや女性のキャリアに関する講演や医療監修も行っている。
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