健康診断の結果提出を会社が命じられる?誰が把握できるかもチェック

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健康経営を目指す会社の人事・総務部の方にとって、従業員の健康診断結果を把握するのは重要な業務の一つです。しかし一方で、健康診断結果は会社の誰が把握しなくてはならないのか、また、把握しても良いのか疑問に思うこともあるでしょう。

そこで今回は、従業員の健康診断の結果を会社で把握するにあたり、会社の誰が把握しなくてはならないのか、結果の提出を命じられるのかについてまとめました。

健康診断の結果を会社で把握するのは義務か

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会社が従業員に対して行う健康診断。まずは、そもそもその結果を会社で把握する義務があるのかどうか、実務上どのように運用されるケースが多いか見ていきましょう。

健康診断の基本

健康診断(定期健康診断)の実施は、労働安全衛生法(労働安全衛生規則第66条)により会社に定められた義務です。正社員は全員対象であり、パートタイマーやアルバイトでも一定条件を満たせば対象となります。これを受診させない場合、労働安全衛生法違反となり罰則が課せられることもあります。

定期健康診断では、以下の11の検査項目を受診します。

  1. 既往歴および業務歴の調査
  2. 自覚症状および他覚症状の有無の調査
  3. 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査および喀痰検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量および赤血球数)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GT(γ-GTP))
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  9. 血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c、やむを得ない場合は随時血糖(食後3.5時間以上経過))
  10. 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査

健康診断は従業員が自主的に受診するものではなく、会社側の義務として法で定められているものです。しかし一方で、会社における業務遂行と直接的に関係はありません。そのため、健康診断の受診中に賃金を支払うかどうかは従業員と会社の取り決めであり、会社側に賃金を支払う義務はないと言えます。

とはいえ、法的な義務を円滑に遂行するため、健康診断を受診している間の賃金はできるだけ支払うことが望ましいでしょう。

法令から見る会社の健康診断結果把握義務

労働安全衛生規則において、健康診断結果は会社が把握し、従業員に通知するものと定められています(第66条、第66条第6項)。
第66条:事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。
第66条の第6項:事業者は、第六十六条第一項から第四項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

さらに、健康状態に問題がある従業員がいた場合、医師の意見をもとに、従業員の実情を考慮して就業場所や作業の変更、労働時間の短縮など労働時間の見直しなどの措置する必要があります(労働安全衛生法第66条第5項)。つまり、会社側で従業員の健康状態をある程度把握しておく必要はある、と考えられます。

一方、個人情報保護法の観点から言うと、会社は本人の承諾なく検査結果を見ることができません。

労働安全衛生法と個人情報保護法、どっちを優先する?

全国健康保険協会や産業医、社労士などの見解によれば「労働安全衛生法の規定を優先し、定期健康診断の結果は会社帰属情報と考えるのが妥当」だとされています。労働安全衛生法上、会社は従業員の健診結果を把握することが前提なため、健康診断を受診した時点でその結果を会社が把握することにも同意が得られた、と考えてよいでしょう。

つまり、労働安全衛生法で規定された11項目については、その結果を会社が把握して構いませんし、その義務があると考えられます。ただし、取得した後の管理には重々注意が必要です。漏洩など、管理上の問題が起こらないよう厳重に管理しましょう。

健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」によれば、健康状態の異常などがあって関係者に健康情報を提供しなくてはならない場合、その提供範囲は就業上の配慮・措置を実施するために必要最小限とすること、とされています。健康管理のためであっても、あれもこれもと情報を取得できるわけではないことにも注意が必要です。

健康診断結果は「要配慮個人情報」

平成27年に個人情報保護法が改正され、不当な差別や偏見、その他の不利益が生じないよう特に配慮が必要な情報として「要配慮個人情報」が定義されました。健康診断に関連するポイントは、以下の2つです。
  • 「病歴、身体障害、健康診断結果、診療録等(表)」は要配慮個人情報に該当
  • 要配慮個人情報の取得、第三者への提供は「あらかじめ本人の同意を得ること」が原則
さらに、平成28年11月30日に公表された「個人情報保護法に関するガイドライン」では、健康診断などの結果について以下のように規定されています。
疾病の予防や早期発見を目的として行われた健康診査、健康診断、特定健康診査、健康測定、ストレスチェック、遺伝子検査、人間ドック等、受診者本人の健康状態が判明する検査の結果が該当する。 健康診断等を受診したという事実は該当しない。 身長、体重、血圧、脈拍、体温等の個人の健康に関する情報を、健康診断、診療等の事業や業務とは関係ない方法により知り得た場合は該当しない。
つまり、基本の11項目以外に健康診断や検査を受ける従業員がいた場合、その検査結果は要配慮個人情報として取り扱う必要があります。また、会社側がその検査結果を把握したい場合、本人の同意を得た上で把握しなくてはなりません。

健康診断結果を見られるのは、会社の誰までか

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次に、健康診断結果を見られるのは会社のどの部署や役職までなのか解説します。

健康診断結果を見られる役職は?

健康診断結果を見られるのは、健康診断の実施の実務に従事している者、人事労務部門の担当者、職場の管理監督者などです。健康状態に異常があった場合、医師の意見を取り入れながら必要に応じて就業制限等を行う必要があるため、必要な役職の者が見てよいと考えられるでしょう。単純に管理職なら見て良い、というものではありません。

健康診断結果を把握するにあたっての法的根拠

会社が健康診断を行うのは、業務に従事する従業員の健康を守るためです。健診の未実施はもちろん、本人に健診結果を通知しない、結果に基づく事後措置を行わない、それにより従業員の健康状態を悪化させた場合には、会社に対し罰金や安全配慮義務違反が問われます。ですから、その範囲において、会社は従業員の健康診断結果を把握しておく必要があるわけです。

健康診断結果の提出を命じられる?

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最後に、健康診断結果の提出は命じられるかどうかについて解説します。

健康診断結果の提出を命じられる?

本来、会社が健康診断結果を把握し、本人に通知することが義務づけられています(労働安全衛生法第66条)。そのため、労働安全衛生法の健康診断の結果を会社が把握することは義務です。基本の11項目については提出してもらい、会社側で把握しておきましょう。

健康診断結果をスムーズに提出してもらうために

健康診断結果をスムーズに提出してもらうためには、以下の2つの方法がおすすめです。
  • 事前に文書で通知する:健診受診の案内をする際、結果の提出についても文書でお知らせ
  • 健康診断結果の提出や会社の健康管理・把握義務について、就業規則や社内規定で記載
これにより、事前に提出についても理解しておいてもらえますので、提出しないケースの減少につながるでしょう。

報告しなくても良い項目は?

基本の11項目の中でも、年齢や条件によって医師の判断で省略可能とされる検査項目があります。
  • 身長:20歳以上の方
  • 腹囲:35歳を除く40歳未満の方、妊娠中の女性その他の方でその腹囲が内臓脂肪の蓄積を判定していないと診断された方、BMIが20未満の方、自己測定の値を申告した方(BMIが22未満の者に限る)
  • 喀痰検査:胸部エックス線検査の結果で病変や結核発病のおそれがないと診断された方
  • 貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査:35歳を除く40歳未満の方
  • 胸部エックス線検査:20歳、25歳、30歳および35歳を除く40歳未満の方で感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する法律施行令およびじん肺法のいずれにも該当しない方
あくまで、医師の判断で省略するとなった場合のみですので、実施する場合は必ず報告する義務があるため注意しましょう。

健康経営推進のために、会社で把握した健康診断結果はシステム管理を

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健康経営を推進する上で、定期健康診断により従業員の健康状態をチェックすることは必須です。HSSの健康管理システムなら、健康診断の項目に抜け漏れがないかのチェックや、再検査が必要な従業員の一括抽出ができます。ぜひ、健康診断結果をシステム管理し、結果の通知や必要に応じた再検査の勧奨を行いましょう。

まとめ

健康診断の結果を把握するのは、実施するのと同様に会社の義務と考えられます。ただし、労働安全衛生法で定められた11項目以外の検査結果に関しては個人情報保護法が優先されるため、本人の同意を得た上で把握しましょう。

把握した健康診断結果は、HSSの健康管理システムなどを使ったシステム管理がおすすめです。再検査が必要な従業員を一括抽出して勧奨を行ったり、項目の抜け漏れがないかのチェックを行うこともできますので、ぜひ導入を検討してみてください。

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執筆者:HSS編集部

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