プレコンセプションケアって何?
「プレコンコンセプションケア」という言葉を初めて耳にする方も多いかもしれません。
プレコンセプションケアとは、性別を問わず若いときからライフプランを考えて、健康的な生活習慣を身につけることです。
このことにより妊娠・出産に伴うリスクを減らし、次世代の子どもへと健康をつなげていくのがプレコンセプションケアの考え方です。
「今は結婚や妊娠を考えていない」という人も、自分のライフプランを考えてぜひプレコンセプションケアを実践してください。
妊娠・出産の有無に関わらず、健康的な生活を送ることはとても大切です。
健康であれば生き方やキャリアにおいても選択肢と可能性が広がり、より豊かな人生につなげることができます。
増え続ける不妊治療
晩婚化が進む日本では、男性も女性も子どもを望む年齢が高くなっています。それにともなって不妊の割合が増加しています。
日本における生殖補助医療(一般的にART:体外受精・顕微授精・凍結胚移植など)の出生に関する最新の統計(2023年分)では、次のような数字が示されています。
2023年に生殖補助医療によって生まれた赤ちゃんは約85,048人でした。同年の日本での出生数は約727,277人です(公益社団法人 日本産科婦人科学会による)。
この結果、約8.5~9人に1人が生殖補助医療によって生まれた計算になります。
つまり、2022年の「約10人に1人」という割合からさらに増えており、2023年ではより高い割合(約9人に1人)になっているという傾向です。
男性も人生設計に役立てて
不妊の原因は女性が多いと思われがちです。
しかし不妊原因が男性にあることも多く、原因の約半分に男性が関与しているといわれています。
男性不妊の原因はさまざまですが、男性もまた女性と同様に年齢の影響があります。精巣機能は加齢とともに少しずつ低下していくことが知られています。
一般社団法人日本生殖医学会によると、精液量の減少が平均35.5歳から顕著になるという大規模研究による報告もあるそうです。
また精子の数や運動率などは、年齢だけでなく喫煙や過度なアルコール摂取、睡眠不足や偏った食事など生活習慣の影響を受けやすいとされています。
毎日の生活を楽しみ、仕事で高いパフォーマンスを保つためには健康が基盤になります。
自分の健康のためにも、そして未来の家族のためにも今からプレコンセプションケアを実践しましょう。
若い女性の健康課題とは?
男性も女性もライフステージごとに、それぞれの健康課題があります。
なかでも近年社会問題となっているのが、若い女性のやせ(低体重)と栄養不足の問題です。
先進国の中でも、日本は若い女性の「やせ」の割合が突出して高いといわれています。
2023年(令和5年度)の「国民健康・栄養調査」によると、20代から30代の女性の20.2%、約5人に1人がBMI18.5未満の「やせ」に該当する状態であると報告されています。
肥満の健康リスクは広く浸透しているために「やせている人は健康だ」と思われがちです。
けれども食事量と同時に運動量も少ない若い女性は、栄養不足や筋肉量の低下、骨量の減少による骨粗しょう症のリスク、さらには月経異常や無月経、不妊などのリスクがあるとされています。また、食事量と運動量が少ない若い女性は、筋肉量の低下を介して、糖尿病の予備軍になるともいわれています。
「やせ」は妊娠・出産、次世代の子どもにも影響が
「やせ」は妊娠・出産にも影響します。
最初のハードルが不妊の問題です。
無理なダイエットによりやせすぎてしまうと月経が不規則になったり、月経があっても無排卵を招いたりして、不妊の原因になることがあります。
さらに月経が止まってしまえば当然のことながら自然妊娠は望めません。
また妊娠できても、やせた女性が妊娠した場合、早産や切迫早産、赤ちゃんが低出生体重(2500g未満)で生まれるリスクが高まるといわれています。
近年日本では低出生体重児が増加しており、小さく生まれた子は将来、糖尿病や心臓病などの生活習慣病を発症しやすいことが分かってきました(ドーハッド(DOHaD)学説)。
つまり、妊娠前からもっている栄養状態が、妊娠や出産、そして生まれてきた赤ちゃんの将来の健康や病気発症のリスクにまで影響を及ぼしてしまうといわれています。
「肥満」もさまざまなリスクが
「やせ(BMI18.5未満)」だけでなく「肥満(BMI25以上)」もまた、健康や妊娠・出産に伴うさまざまなリスクを高めます。
例えば肥満も不妊原因の1つです。
肥満であるとホルモンのバランスが崩れて「無排卵」などの排卵障害を起こす確率が高くなると言われています。
無事に妊娠出来ても安心はできません。
妊娠中には「妊娠糖尿病」「妊娠高血圧症候群」「早産・流産」のリスクが、出産時には「帝王切開」「分娩後出血」などのリスクが高まります。
さらに生まれてくる赤ちゃんには出生体重4,000g以上の「巨大児」になるリスクが高まります。
また妊娠前の肥満や妊娠中の過度な体重増加があると、生まれてくる子どもも小児期の肥満や将来の生活習慣病リスクを高めることが知られています。
加えて、小児喘息などのアレルギー疾患リスクとの関連を示す報告もあります。
「やせ」も「肥満」もダメ。標準体重を目指そう
健康のためにも、また妊娠や出産、生まれてくる赤ちゃんのためにも、じつは体重管理はとても重要なことなのです。
「やせ」も「肥満」も好ましくありません。
若いうちから、BMI18.5以上25未満の「標準体重」をめざしましょう。
バランスのよい食事を心がけよう
朝食抜きなど食事の欠食やダイエットによる若い女性の栄養失調が深刻です。
「飽食といわれる時代に栄養失調?」と思うかもしれません。
しかし、摂取カロリーの不足や、食事は摂っているのに偏った食生活によりたんぱく質やビタミン、ミネラルなどの必要な栄養素が摂取できていないことが問題になっています。
1食でも抜くと、1日に必要なエネルギーや栄養素がとれません。低栄養にならないためには、まず3食きちんと食べることが大事です。
また、バランスのよい食事を心がけましょう。
そのためには、主食(ごはんやパン、めんなど)、主菜(肉、魚、卵、大豆など)、副菜(野菜、芋類、きのこ、海藻など)がそろった食事をすることが大事です。
外食やコンビニを利用するときも、主食や主菜だけですまさずに、切り干し大根やひじき煮、野菜のおひたしなどの副菜をプラスしたり、野菜ジュースを摂るなど、栄養バランスのよい食事がとれるように心がけましょう。
妊娠前から葉酸をしっかりとろう
健康を維持するためには、バランスよくたくさんの栄養素を摂ることが大事ですが、とくに若い女性に積極的に摂ってほしい栄養素があります。それが「葉酸」です。
葉酸は、ビタミンB群の一種で、レバーや緑黄色野菜などに含まれています。
葉酸が不足すると、貧血やめまい、倦怠感などの原因となるといわれており、「性別や年齢に関係なく、基本的には食事から適切に摂取することが重要です。
また葉酸をしっかり摂ることで、妊娠初期の胎児に起こる神経管閉鎖障害(脳や脊髄に生じる先天異常)のリスクを減らせることがわかっています。
厚生労働省は妊娠を計画している女性や妊娠の可能性のある女性に対して、妊活中(妊娠の1か月以上前)から妊娠3か月までの間はとくに食事に加えてサプリメントなどから1日400μg(マイクログラム)の葉酸を摂取することを推奨しています。ただしサプリメントの摂り過ぎには注意が必要です。
葉酸をしっかり摂るには、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜を積極的に摂ることがポイントです。
葉酸は熱や水に弱いので、茹でるよりも電子レンジで加熱したり、さっと茹でる、蒸すといった調理方法がおすすめです。
ほかにも海藻類(とくに焼きのり)や枝豆、納豆、いちごなども葉酸が多く含まれています。
葉酸以外にも、不足しがちな栄養素である鉄分やカルシウムはしっかりとりたい栄養素です。
若い世代の運動不足が深刻
令和5年「国民健康・栄養調査」によると、運動習慣のある者の割合は、男性は36.2%、女性で28.6%で、なかでも最も低かったのが男性では30歳代(23.5%)、女性では20歳代(14.5%)でした。若い世代の運動不足が深刻です。
「まだ若くて健康だから運動しなくても大丈夫」と思っていませんか?
今の時点では問題がなくても、若いころの運動不足は、将来的に生活習慣病の発症や骨粗しょう症のリスクを高めるといわれています。
さらに運動不足により、大腸がんや乳がんなどの一部のがんのリスクが上がることもわかっています。
また妊娠・出産・子育てには多くの体力を使います。
とくに初めてのお産の場合、分娩所要時間は平均12~16時間程度といわれていますから、長い陣痛を乗り切るためには体力もスタミナも必要なのです。
妊活中から意識的に体を動かして運動不足を解消しましょう。
目指せ1日8,000歩
適度な運動はストレス解消や気分のリフレッシュにもつながりますから、運動習慣をつけたいですね。
運動習慣のない人はまずは手軽なウォーキングから始めるとよいでしょう。
運動時間がとれないという人は、通勤時や買い物のときなど、意識的に歩く量を増やしてみましょう。
まずは今までより10分間多く歩くこと。10分の歩行で歩数を1,000歩増やすことができるといわれています。
少しずつ歩数を増やして1日8,000歩を目指しましょう。
また、スクワットなどの筋トレも行いましょう。
(カコミ)プレコンセプションケアセンターってどんなところ?
国立成育医療研究センターでは「若い男女が、あらゆる視点から現在の健康状態のチェックを受け、日々の生活や健康について各分野のスペシャリストたちに相談できること」を目指して、2015年に日本で初めて「プレコンセプションケアセンター」を開設しました。
プレコンセプションケアセンターでは、専門医と管理栄養士が将来の妊娠を考えた健康状態のチェックとアドバイスを行う「プレコンチェック(検診とカウンセリング)」(要予約)や、妊娠・出産、現在の病気に関する不安などをオンラインで各専門分野の医師に相談できる「プレコン相談」(要予約)などを実施しています。
興味のある方は、プレコンセプションケアセンターのホームページをご参照ください。
※国立成育医療研究センター プレコンセプションケアセンター