就職内定者に提出を求めるべき書類は様々ですが、その一つに「健康診断書」があります。人事や総務の担当者は、就職内定者から受け取る書類を不備のないようチェックし、労働安全衛生法を遵守しなくてはなりません。
そこで、本記事では就職内定者が提出すべき健康診断書について、雇入れ時・採用選考時の違い、提出のタイミングやかかるコストについてご紹介します。
健康診断書と内定者について
就職内定者に健康診断書の提出を求めるのは、労働安全衛生法と労働安全衛生規則という法律によって定められている雇入れ時の健康診断と関係があります。
■労働安全衛生法第66条
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。
■労働安全衛生規則第43条
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
つまり、企業が従業員を雇用するときには、健康診断を行わなくてはならないのです。ただし、従業員が入社前の3ヶ月以内に必要な健康診断項目を受けていれば、受診した健康診断の結果を提出することで替えることもできます。
ただし、これはあくまでも法で定められた「雇入れ時の健康診断」の場合です。採用選考時には、これとは別に「採用選考時の健康診断」というものがあります。両者の違いについて、詳しく見ていきましょう。
雇入れ時の健康診断
雇入れ時の健康診断とは、上記のように法で定められており、企業が従業員に対して必ず行わなくてはならないものです。入社後に健康診断を行う場合は内定時に健康診断書の提出を求めなくても構いませんが、内定後、入社前に健康診断書の提出を求める場合は、入社日からさかのぼって3ヶ月以内に受診したものであることを確認しましょう。
雇入れ時の健康診断で必要な項目は、以下の11項目です。
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量および赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GT(γ-GTP))
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c、やむを得ない場合は随時血糖(食後3.5時間以上経過))
- 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
このように、企業が従業員の健康状態を把握することが法で定められているのは、従業員が健康に働けるようにするためです。もし、入職後に従業員が何らかの病気にかかっていることが判明した場合、病気によっては企業の責任を問われる可能性も考えられます。
しかし、雇入れ時の健康診断によって入社前から発症していたことがわかれば、企業に責任はないと判断される可能性が高いでしょう。つまり、就職内定者がその後働く上での労務管理においても、雇入れ時の健康診断は重要な役割があります。また、企業の業務内容によっては健康診断の結果を加味しながら、適切な部署に配置する必要もあります。
このとき、内定後、入社前に健康診断書を提出させるからといって、基本的には内定取り消しにならないことに注意が必要です。労働に著しい影響を及ぼすほど健康状態が悪い場合は内定取り消しとなることも考えられますが、こうした合理的・客観的な必然性がない場合、健康診断書の結果だけで企業が安易に内定を取り消すことはできません。
採用選考時の健康診断
採用選考時の健康診断は、法で定められた健康診断ではありません。この健康診断は、採用・内定の可否に十分影響を与える可能性があります。というのも、この段階で行う健康診断は、当該職種に就労するために一定の健康条件が必要なケースでのみ実施するからです。採用にあたって合理的かつ客観的に必要と認められなければ、健康診断書の提出を求めるのは就職差別にあたるので注意しましょう。
例えば、以下のようなケースが挙げられます。
- 運転・配送業務を行うにあたり、失神などの発作が起こらないことを確認する
- アレルギー物質を取り扱う業務を行うにあたり、当該物質に対するアレルギー症状がないことを確認する
このような場合は、健康診断書を提出させた上で、その結果を採用の可否に反映させることが合理的かつ客観的に必要である例として、厚生労働省「公正な採用選考をめざして」に掲載されています。健康状態が、就労できるかどうかに直接関わってくるためです。
しかし、この場合でも、当該職種の選考では一律に健康診断書を提出させられる、というわけではないことに注意が必要です。健康診断書の提出を求める場合、必要性を十分に検討した上で、応募者本人にその必要性を説明し、同意を得てからとなります。項目についても、あくまでも業務に関係する項目だけを受診させ、提出してもらいましょう。
健康診断書を内定者からいつ提出してもらうべきか
上記のことを踏まえ、「雇入れ時の健康診断」に替えるものとして健康診断書を提出してもらう場合、そのタイミングは「内定後、入社前」とするのが妥当と考えられます。特に、新卒採用者の場合、内定が決定した時点で健康診断書の提出を求める企業が多いようです。ただし、入社日前から3ヶ月以内の健康診断書しか有効でないことに注意しましょう。
また、ごく稀なケースとして採用選考時に健康診断書の提出を求める場合、応募者の同意を得た上で、選考中に提出してもらいます。この場合は、あくまでも業務に必要な健康状態のみ確認できるよう、項目を絞った健康診断書を提出してもらうようにしましょう。
健康診断書の発行にかかるコスト
健康診断書の発行にかかるコストは医療機関によって異なり、1,000円〜数千円程度で、基本的には企業負担となります。しかし中には、入社時に必須の提出書類と義務づけることで、内定者負担としている企業もあります。
とはいえ、入社後の健康診断が企業負担である以上、雇入れ時の健康診断については企業負担とするのが良いでしょう。特に、3ヶ月以内の受診歴がない内定者に対し、自費で健康診断の受診を求める場合、立て替えの形にして後から企業が費用を負担するのがおすすめです。
健康診断書の発行料金にはバラつきが
健康診断書の発行には、健康診断の受診費用とは別に「文書発行費用」がかかります。医療機関によっては健康診断の料金に含まれていることもありますが、別料金が設定されていることも多いので注意しましょう。文書発行費用は1,000円〜数千円程度と、これも医療機関によってばらつきがあります。
また、新卒内定者の場合、大学で受けた健康診断の結果を提出することもできます。その場合、雇入れ時健康診断に代えられるのは入社前3ヶ月以内に受診した場合のみです。発行費用は数百円程度と、医療機関よりもぐっと安くなるケースがほとんどです。
まとめ
就職内定者が健康診断書を提出する必要があるのは、雇入れ時の健康診断に替えて提出する場合です。他にも、採用選考時に提出を求められる場合もありますが、非常に限定的なケースであり、項目も絞られることに注意しましょう。
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