安全衛生責任者とは?選任が必要な業種や職務内容について知ろう

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安全衛生責任者とは、統括安全衛生責任者を選任するべき事業者以外の請負人において選任すべき職務です。この点がやや複雑なため、正しく理解して必要に応じ、安全衛生責任者を選任する必要があります。本記事では、安全衛生責任者と兼任されやすい職長との違いや必要な業種、職務内容や講習の受講方法について解説します。

安全衛生責任者とは

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安全衛生責任者とは、建設業または造船業(特定事業)の現場において、事業者の代表として現場の安全に関し、責任を負う職業のことを指します。これは、特定事業の現場では複数の関係請負人に仕事を請け負わせることが多いため、下請けになるほど安全衛生に対する責任が希薄になりがちなことから、実際の現場で安全衛生を徹底するためです。

統括安全衛生責任者を選任しなくてはならない「特定元方事業者」以外の「請負人」において、当該の仕事を自ら行う場合、選任しなくてはなりません(労働安全衛生法第15条1項または3項)。また、安全衛生責任者を選任した「請負人」は、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者に対して、遅滞なくその旨を通知する必要があります(労働安全衛生法第16条)。

これは、元請負業者(統括安全衛生責任者を選任すべき事業者)を頂点とし、各現場に統率された安全衛生の体制を確立するためであり、安全衛生責任者を選任しない場合や職務義務に違反した場合は、当該事業者が50万円以下の罰金に処せられます。

統括安全衛生責任者との違い

前章でも軽く触れたように、安全衛生責任者と統括安全衛生責任者の違いは「請負人」において選ばれるか「特定元方事業者」において選ばれるかです。また、統括安全衛生責任者をトップに置いた安全衛生体制を確立するため、統括安全衛生責任者は関係請負人が行う安全衛生教育の指導や援助を行ったり、安全衛生責任者は統括安全衛生責任者とこまめな連絡をとり、関係者にその内容を連絡・調整したりする必要があります。

職長との違い

統括安全衛生責任者も、安全衛生責任者も、安全衛生に関する責任を負う立場であることから、特に建設業においては職長と兼任されることが多く、業務が混ざって認識されていることも多いです。しかし、職長と安全衛生責任者はそもそも違う職業であり、例えば職長教育と安全衛生責任者教育は以下のように異なります。

<職長教育とは>
職場の責任者として従業員の安全と健康を守るため、現場の進行管理や安全管理に必要な知識を身につけるもの。作業中の従業員を直接指導、または監督する人について教育が必要と定められていることから、役職名が「職長」となっていなくても、班長や作業リーダー、主任、監督などが受けるべきものです。逆に、現場での指揮・指導に該当する業務内容を行っている人が職長教育を受けていない場合、労働基準監督署から是正勧告を受けてしまうため、注意しましょう。

<安全衛生責任者教育とは>
安全衛生責任者教育とは、労働安全衛生規則第19条で規定される職務について理解し、現場の安全を確保して適切に作業を進めるため、現場の安全衛生管理に必要な知識を習得することが主な目的です。また、複数の請負人が関わる現場において、統括安全衛生責任者や他の安全衛生責任者と連携をはかるための知識も重要です。

  職長 安全衛生責任者
職務内容 ・作業手順の決定、改善
・作業者への教育や指導
・安全な作業環境の整備
・統括安全衛生責任者との連絡、調整
・関係者の連絡や管理
・2次下請事業者や3次下請事業者がいる場合、そちらとの連絡や調整
その他の違い ・作業グループに対して1名
・現場監督者に位置付けられる
・1事業者に対して1名
・作業が混在することで労働災害が起こるのを防止するための連絡、調整役に位置付けられる

安全衛生責任者の選任

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安全衛生責任者の選任は、労働安全衛生法第15条、16条に定められています。わかりやすくざっくりとまとめると、以下のようになります。

建設業と造船業(特定事業)を行う事業者は、当該従業員とその下請けの請負人(関係請負人)の従業員が現場で作業を行う際、別々の事業者に属する従業員が同じ場所で作業を行うことによって起こる労働災害を防ぐため、統括安全衛生責任者を選任し、元方安全衛生管理者の指揮をさせなくてはならない。

また、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で仕事を行う事業者(下請け事業者)は、安全衛生責任者を選任し、統括安全衛生責任者との連絡や厚生労働省令で定める事項を行わせなくてはならない。安全衛生責任者を選任した請負人は、同じ仕事を行う事業者に対して、遅滞なくその旨を伝えなくてはならない。

ただし、統括安全衛生責任者や安全衛生責任者を選任する義務があるのは、現場の規模が以下の場合です(労働安全衛生法施行令第7条)。

  • 特定元方事業者の従業員と、関係請負人の従業員の合計が常時50人以上の現場
  • ずい道建設、橋梁建設、圧気工法による作業の場合は常時30人以上の現場

とはいえ、上記未満の規模の現場の場合は責任者がいらないということではなく、統括安全衛生責任者や安全衛生責任者に準ずる者を選任する必要がある、ともされています。安全衛生上リスクがあると考えられる現場では、安全衛生の管理が非常に重要なためです。

安全衛生責任者に必要な資格

安全衛生責任者に必要な資格は特にありません。何らかの免許や実務経験などが必要なわけではありませんが、後述するような「安全衛生責任者教育」という講習を受けている必要があります

安全衛生責任者を選任した際の報告

最初に軽く触れたように、安全衛生責任者を選任した際は、すぐにその旨を特定元方事業者(統括安全衛生責任者を選任する事業者)に報告しなくてはなりません。これは、統括安全衛生責任者とスムーズかつ即時に連絡が行えるようにし、当該事業における安全衛生の体制を確立するためです。できれば、他の安全衛生責任者にも選任を知らせておいた方が良いでしょう。

代理者の選任

安全衛生責任者は、上記のように現場間での安全衛生体制の連絡や確認、認識の統一などの職務が発生します。そのため、安全衛生責任者がいないという状態にならないよう、安全衛生責任者が旅行や疾病、事故、その他やむを得ない事由によって現場にいられない場合、職務が果たせない場合には、必ず代理者を選任しなくてはなりません。

安全衛生責任者の職務内容

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安全衛生責任者の職務内容は、以下の6つです。

  1. 統括安全衛生責任者との連絡
  2. 統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の、関係者への連絡
  3. 統括安全衛生責任者からの連絡事項のうち、請負人に関わる事項についての管理
  4. 請負人が従業員の作業計画を作る場合、その計画と特定元方事業者が作る計画との整合性をはかるための、統括安全衛生責任者との調整
  5. 請負人の労働者の行う作業および、請負人の労働者以外の者が同じ場所で作業を行うことで生ずる労働災害の危険の有無の確認
  6. 請負人がその仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合、他の請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡および調整

つまり、安全衛生責任者の職務内容は、主に連絡や調整であると言えます。統括安全衛生責任者から受けた連絡を関係者に伝えたり、作業計画の整合性をはかるための調整を行ったりするのが主な業務です。ただし、請負事業者の従業員の安全衛生を管理したり、労働災害の危険を防止したりするのも重要な業務であることを忘れてはいけません。

安全衛生責任者の心構え

安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者の代わりに各事業者に配置されているということを自覚する必要があります。そのための心構えとして、以下のことが挙げられます。

  • 最低でも1日1回、安全について話す。
  • 現場における安全でない行動、安全でない状態を見逃さない。
  • 従業員の健康状態を正しく把握し、適切な対処を行う。
  • 安全衛生上の問題が発生した場合、または相談を受けた場合は、必ず改善のための具体案を出す。
  • 連絡事項や指示が遵守されているかどうか、必ず確認する。
  • 設備や作業方法についての改善報告を受けた場合、改善が適切かどうか現場で確認する。

安全衛生責任者は、単なる連絡係ではないことがここでも示されています。安全衛生責任者に選任された方は、安全に関するリスクを見逃さないようにしたり、安全衛生上の問題に具体的な解決策を出したりすることも職務の一部であることをしっかりと心に留めておきましょう。

安全衛生責任者講習の受講方法

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安全衛生責任者に選任されるためには、安全衛生責任者講習を受講する必要があります。ただし、安全衛生責任者は職長と兼任されることが多いため、合わせて受講できるようなカリキュラムになっていることが多いです。具体的には、以下の内容を14時間かけ、2日間に分けて受講します。

教育内容 時間
作業方法の決定および労働者の配置に関すること 2時間
労働者に対する指導又は監督の方法に関すること 2時間30分
危険性または有害性などの調査およびその結果に基づき講ずる措置などに関すること 4時間
異常時における措置に関すること 1時間30分
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること 2時間
安全衛生責任者の職務など 1時間
統括安全衛生管理の進め方 1時間

特に、最後の2時間が安全衛生者教育に関する部分です。講習は基本的に座学であり、終了後にテストや試験があるわけではありませんので、テストに落ちて安全衛生責任者になれなかった、ということはありません。ただし、もちろん居眠りなどあまりにも不真面目な態度で座学を受けていた場合は、従業員の安全衛生を担う立場にふさわしくないとして講習終了が認められないケースもありますので、注意しましょう。

講習は会場で受講する方法、出張講習会で受講する方法、Web講義で受講する方法の3種類があります。

<会場で受講する>
講習会に出向いて受講するもので、平日の2時間で行われます。各地域の労働安全基準協会や、建設業労働災害防止協会などが行っており、だいたいテキスト料込みで15,000円〜20,000円くらいが費用の目安です。

<出張講習会で受講する>
講師に依頼し、会社の会議室などで講義を開催してもらうものです。どうしても平日に受講するのが難しい、対象者が複数いる大きな事業者などが行います。料金は講師を派遣する協会などによっても、参加者の数によっても異なりますので、気になる場合は問い合わせてみましょう。

<Web講義で受講する>
Web講義とはいわゆるe-ラーニングのことで、パソコンを使って行われるため、個人で行っても構いませんし、会議室などに集まって集団で行っても構いません。これも料金は主催する団体や協会によりますので、受講を考える場合は問い合わせてみましょう。

また、会場で受講する場合について、2つ事例を紹介します。

一般社団法人 労働技能講習協会

一般社団法人 労働技能講習協会では、建設業を対象とした職長・安全衛生責任者教育の講習会を行っています。

講習料金:17,300円(受講料+テキスト代、税込)
申し込み方法:FAXまたは郵送、インターネット
場:東京、埼玉、静岡、神奈川、千葉、栃木、茨城、群馬

こちらの協会では、出張講習も受けつけています。日程が難しい場合は、出張講習を申し込むのも良いでしょう。

大阪府職業能力開発協会 職業訓練センター

大阪府職業能力開発協会 職業訓練センターでは、建設業・造船業のいずれにも活用できる職長・安全衛生責任者教育を行っています。職長教育のみ、または安全衛生責任者教育のみの受講はできませんので、注意しましょう。

講習料金:14,500円(受講料+テキスト代、税込)
申し込み方法:電話
会場:エル・おおさか南館(大阪府職業能力開発協会 職業訓練センター)

こちらは職業訓練センターでの受講となるため、受講できる場所や申し込み方法が非常に限られていることに注意しましょう。

統括安全衛生責任者と総括安全衛生管理者の違い

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統括安全衛生責任者とは、ここまでご紹介してきたように、建設業または造船業の元方事業者の現場において、当該事業者の従業員や関係請負従業者の従業員の作業が同じ場所で行われるとき、労働災害を防止するため現場の安全衛生について統括する責任者のことを指します。

一方、総括安全衛生管理者とは、安全管理者や衛生管理者の指揮をとり、現場における安全衛生の技術的事項を管理する役職のことを指します。統括安全衛生管理者を選任すべきなのは林業などの100人以上の現場、製造業や電気業などの300人以上の現場のほか、その他すべての業種で1,000人以上の現場です。

つまり、総括安全衛生管理者は統括安全衛生責任者と比べ、選任すべき職種が多く、その業務範囲も広いです。例えば、健康診断の実施や労働災害の原因調査なども統括安全衛生管理者の職務に含まれます。このように、名前は似ていても全く異なる職種ですから、選任の際には注意しましょう

安全衛生責任者について知り、正しく選任しよう

安全衛生責任者とは、特定事業と呼ばれる建設業・造船業の現場において、統括安全衛生責任者を選任すべき元方事業者以外の請負人(下請事業者など)が選任しなくてはならない、現場の安全衛生の責任者です。主に統括安全衛生責任者や他の請負人との連絡や調整が業務ですが、その連絡や調整に基づき、職場の安全衛生を守ることも忘れてはなりません。

安全衛生責任者の心構えに、従業員の健康状態の把握があります。従業員の健康状態を把握するためには、紙ベースの管理よりもHSSなどの健康管理システムを用いれば、スピーディかつ抜け漏れが発生しにくくなります。安全衛生責任者の多くは職長も兼ねて忙しいことも考慮し、こうしたシステムの導入を検討してはいかがでしょうか。

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執筆者:HSS編集部

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