健康診断結果の報告書提出は義務?提出期限や罰則はあるの?

常時使用する従業員に対し、健康診断を行うのは事業者の義務です。また、事業所の規模や業務内容(実施した健康診断の内容)によっては、健康診断の結果を労働基準監督署に報告する義務もあります。
では、労働基準監督署に健康診断の結果を提出する義務があるのはどのような場合なのでしょうか。提出に期限や罰則があるかもご紹介しますので、健康診断実施の担当者の方はぜひ一度ご確認ください。
労働基準監督署への提出義務がある健康診断結果報告書一覧
労働基準監督署に健康診断結果報告書を提出する義務があるのは、「一般健康診断」と「特殊健康診断」に含まれる、以下の13のケースです。
健康診断の種類 | 健康診断結果報告書様式の名称 | 部数 |
定期健康診断 (常時50人以上の労働者を使用している事業場) |
定期健康診断結果報告書 | 2部 |
特定業務従事者健康診断 (常時50人以上の労働者を使用している事業場) |
定期健康診断結果報告書 | 2部 |
歯科医師による健康診断 (常時50人以上の労働者を使用している事業場) |
定期健康診断結果報告書 | 2部 |
有機溶剤等健康診断 | 有機溶剤等健康診断結果報告書 | 2部 |
鉛健康診断 | 鉛健康診断結果報告書 | 2部 |
四アルキル鉛健康診断 | 四アルキル鉛健康診断結果報告書 | 2部 |
特定化学物質健康診断 | 特定化学物質健康診断結果報告書 | 2部 |
高気圧業務健康診断 | 高気圧業務健康診断結果報告書 | 2部 |
電離放射線健康診断 | 電離放射線健康診断結果報告書 | 2部 |
石綿健康診断 | 石綿健康診断結果報告書 | 2部 |
じん肺健康診断 | 除染等電離放射線健康診断結果報告書 | 2部 |
除染電離健康診断 | じん肺健康管理実施状況報告 | 3部 |
指導勧奨による特殊健康診断 | 指導勧奨による特殊健康診断結果報告書 | 2部 |
上記の健康診断はいずれも労働安全衛生法によって定められた事業者の義務であり、実施後は労働基準監督署への報告が必要です。ただし、定期健康診断や特定業務従事者健康診断の場合、報告義務があるのは常時50人以上の労働者を使用している事業場のみです。事業場の労働者の数が50人未満の場合は、労基署への報告は義務ではありません。
この他、「指導勧奨による特殊健康診断」という健康診断があります。指導勧奨による特殊健康診断とは、労働安全衛生法で定められた特殊健康診断(有機溶剤等健康診断、鉛健康診断など)には当てはまらないものの、紫外線・赤外線や特定の化学物質を取り扱う、危険な工具を扱う、危険な作業を行うなどの場合に、行政からの通達により指導勧奨されている健康診断のことを指します。
指導勧奨による特殊健康診断は、労働安全衛生法で定められた特殊健康診断と異なり、努力義務となっています。実施義務ではありませんが、実施した際には報告書を提出するのが望ましいです。
健康診断の種類について、詳しくは以下の記事もぜひご一読ください。
[健康診断の種類にはどんなものがある?項目や規定を詳しく解説]
労働基準監督署への報告義務がある健康診断の種類
労働基準監督署への報告義務がある健康診断は、前章でご紹介した通り「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2つです。そこで、本章ではそれぞれの健康診断の内容を詳しくご紹介します。
一般健康診断
「定期健康診断」「特定業務従事者のための健康診断」の2つは、一般健康診断に含まれる健康診断です。それぞれの健康診断について、詳しく見ていきましょう。
定期健康診断
定期健康診断は、労働安全衛生規則第44条に定められた健康診断です。
- 対象者:常時使用する労働者
- 実施時期:1年以内ごとに1回、定期に実施
「常時使用する労働者」とは、全ての正社員のほか、パート・アルバイトであっても以下の条件を満たす場合は該当します。
- 無期契約、または1年以上の有期契約である
- 週の所定労働時間数が、正社員の4分の3以上である
定期健康診断では、以下の11項目を検査します。
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
- 胸部エックス線検査および喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量および赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GT(γ-GTP))
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c、やむを得ない場合は随時血糖(食後3.5時間以上経過))
- 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
対象となる従業員に定期健康診断を実施するのは事業者の義務です。しかし、労基署への報告書提出義務があるのは、「常時使用する労働者」を50人以上有する事業場のみであり、人数が満たない場合は実施後、労働基準監督署への報告をしなくても構いません。
事業場を1単位とするため、例えば15人の営業所×4+20人の本社1つ、など、すべて場所が別々でそれぞれの事業場が50人に満たない場合は、労働基準監督署への報告義務はありません。もちろん、「常時使用する従業員」が1人でもいれば、該当の従業員に健康診断を受けさせる義務はありますので、注意しましょう。
特定業務従事者のための健康診断
特定業務従事者のための健康診断は、労働安全衛生規則第45条で定められた健康診断です。
- 対象者:労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務に常時従事する労働者
- 実施時期:6ヶ月以内ごとに1回、定期に実施
実施内容は定期健康診断と同じで、報告義務があるのも「常時使用する労働者」を50人以上有する事業場のみですが、実施時期が異なりますので注意しましょう。
特殊健康診断
特殊健康診断とは、労働安全衛生法第66条の2に定められた健康診断です。
- 対象者:法で定められた有害業務に常時従事する従業員
- 実施時期:雇入れ時、配置替えの際および6ヶ月以内ごとに1回(じん肺健診は就業時・管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回の定期健診と定期外、離職時)
有害業務とは、以下のような業務のことを指します。
- 有機溶剤等健康診断
- 鉛健康診断
- 四アルキル鉛健康診断
- 特定化学物質健康診断
- 高気圧業務健康診断
- 電離放射線健康診断
- 石綿健康診断
- 除染電離健康診断
- じん肺健康診断
業務によって検査すべき項目が異なりますので、該当する有害業務を取り扱う事業場では実施項目についてよく確認しましょう。特殊健康診断の場合、「酸等取扱い者の歯科健康診断」を除き、実施後は人数に関わらず速やかに労働基準監督署へ報告書を提出する必要があります。
「酸等取扱い者の歯科健康診断」のみ、実施後の報告義務は一般健康診断と同様、「常時使用する労働者」を50人以上有する事業場のみと規定されています。報告書も「定期健康診断結果報告書」とするよう義務付けられていますので、報告書の種類を間違えないよう気をつけましょう。
健康診断の種類や検査項目について、詳しくは以下の記事もご参照ください。
[健康診断の種類と検査項目は?担当者が困らないための健康診断の基礎知識]
健康診断結果報告書を作成する際の注意点
健康診断結果報告書の提出は、労働安全衛生法52条で以下のように定められています。
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、第44条(定期健康診断)、第45条(特定業務従事者の健康診断)又は第48条(歯科医師による健康診断)の健康診断(定期のものに限る)を行ったときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書様式第六号(表面)(裏面)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
「遅滞なく」と記載されていますので、健康診断実施後は速やかに健康診断報告書を作成し、事業場所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。提出に際し明確な罰則規定や期限はありませんが、報告を長期間怠ると労働基準監督署から連絡や注意を受けることがあります。
罰則がないとはいえ、健康診断報告書はできる限り速やかに作成・提出するようにしましょう。
健康診断結果報告書は、実施後速やかに提出しよう
健康診断結果報告書の提出義務があるのは、常時使用する従業員が50人以上いる事業場の定期健康診断、特定業務従事者健康診断、酸等取扱い者の歯科医師による健康診断と、規模に関わらず特殊健康診断を実施した場合です。健康診断結果報告書の提出期限や罰則は明確に規定されていませんが、健康診断実施後、遅滞なく提出することとされているため、結果が出たらできるだけ速やかに報告書を作成・提出しましょう。
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