安全衛生標語とは?作成方法やおすすめテーマ、過去の事例もご紹介!
企業全体で安全衛生を推進していくにあたっては、経営陣や幹部が担当者だけでなく、従業員1人ひとりにも周知していかなくてはなりません。しかし、安全衛生について説明会や研修などを開催するのはコストも手間もかかるため、キャッチーでわかりやすい「安全衛生標語」を設定することで、従業員の安全衛生に関する意識を高める方法があります。本記事では、安全衛生標語の概要や作成方法、過去の事例などをご紹介します。
安全衛生標語とは?
安全衛生標語は、厚生労働省および中央労働災害防止協会が主唱している「全国労働衛生週間」や年末年始無災害運動標語のほか、年間の安全衛生を目指すために作られます。
年末年始や年間の標語は中央労働災害防止協会が公募しているほか、「全国労働衛生週間」の一環では各社で従業員から安全衛生標語を公募し、優秀賞などを決めています。安全衛生スローガン、労働安全標語、労働安全衛生標語などと呼ばれたり、分けて選考されたりすることもあります。
安全衛生標語募集要領
中央労働災害防止協会が公募する、「令和5(2023)年度 年末年始無災害運動標語」と、「令和6(2024)年 年間標語」の安全衛生標語募集要領についてご紹介します。(HP:https://www.jisha.or.jp/slogan/)標語の種類
①令和5(2023)年度 年末年始無災害運動標語何かと慌ただしい年末年始を無災害で過ごし、働く人すべてが新年の幕開けを明るく笑顔で迎えられるよう、労働災害防止の重要性について訴えるもの。
(運動期間 令和5(2023)年12月1日~令和6(2024)年1月15日)
②令和6(2024)年 年間標語
労働災害のない安全で快適な職場を築くために、働く人一人ひとりのかけがえのない命と健康の確保を最優先にする職場風土づくりをアピールするもの。
(実施期間 令和6(2024)年1月~12月)
応募方法
中央労働災害防止協会のHPにある安全衛生標語応募フォームで応募します。
1人あたり3点まで作品の応募が可能です。
応募締め切り
令和5(2023)年4月21日(金)必着です。次年度も同時期の締め切りとなる可能性が高いため、次年度に応募を考えている方は注意しましょう。入賞について
入選…各1点(表彰状および副賞賞金5万円)
佳作…各3点以内(表彰状および副賞賞金1万円)
※ただし、入賞した作品の応募者が中学生以下だった場合、副賞賞金に代えて賞金額相当の図書カードの授与となります。
全国労働衛生週間とは
全国労働衛生週間とは、労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高め、職場の自主的な活動を促すことで労働者の健康を確保することが目的の期間です。昭和25年に第1回が実施されてから毎年実施されていて、令和4年で73回目です。毎年10月1日〜7日が実施期間であり、その前月の9月1日〜30日が準備期間とされています。安全衛生標語の作成方法
安全衛生標語の作成方法に明確な決まりはありませんが、ここでは、押さえておくとよりよいポイントを4つご紹介します。
①:5・7・5を意識する
安全衛生標語やスローガンは、俳句の形式にすることが基本です。ただし、これは必ずしも守らなくてはならないわけではなく、俳句の形にすると標語にリズム感が生まれ、覚えやすくなるためだと考えられます。リズム感を大切にしながら、短い文章の中で安全意識を高める呼びかけを行いましょう。
また、5・7・5にそれぞれ意味を当てはめると考えやすいです。例えば、以下のような例が考えられます。
- 1. 行動+結果+目標
- 2. 注意喚起+対策や注意喚起+目標
1.の例では、「手を組んで 今年も安全 こぞって健康(中央労働災害防止協会、昭和56年年間標語)」などが挙げられます。2.の例では、「一歩先読む危険予知 プロの意識でゼロ災害(関西電力、平成24年度安全衛生スローガン)」などがわかりやすいでしょう。
②頭韻や脚韻を踏む
標語内で韻を踏むことで、より印象に残りやすくなります。頭韻とは5・7・5のそれぞれ最初の音を合わせるもの、脚韻とはそれぞれ最後の音を合わせるものです。これも例を挙げると、「ゼロ災害 日ごと人ごと職場ごと(中央労働災害防止協会、昭和61年年間標語)」などがあります。5・7・5のリズム感とあいまって、より覚えやすく口ずさみやすいフレーズになっているのではないでしょうか。③命令形、疑問形を文頭に持ってくる
文頭に命令形や疑問形を使うと、標語にインパクトが生まれます。一方で、キツい雰囲気にもなってしまうので、使い方には十分注意しましょう。どちらかというと疑問形の方が寄り添う形になり、柔らかい印象になるため、標語の種類や与えたい印象、職場の雰囲気によってどちらを使うかよく検討するのがおすすめです。
例えば、危険性の高い職場で「ちょっと待て!」「見逃すな!」などの表現を使えば、業務中にハッと気づけることも増えるでしょう。一方で、「確かめた?」「大丈夫?」などの柔らかい表現なら、無用な威圧感や緊張感を軽減することもできます。
④掛け詞(かけことば)を使う
標語内に掛け詞を使うのも記憶に残りやすくなります。「掛け詞」は俳句や短歌でよく使われる方法で、駄洒落などにもしやすいので、安全衛生標語としても覚えやすいでしょう。例として「危険物 事故は瞬間 無事故は習慣(全国危険物安全協会、平成22年度最優秀作品)」などがあります。②の頭韻や脚韻ともつながりますので、合わせて考えてみるのもおすすめです。安全衛生標語自動作成ツール
安全衛生標語には、自動作成ツールもあります。過去の標語などから言葉を選ぶため、被ってしまったり、意味が通じなくなってしまったりすることも多いですが、標語作りのとっかかりにするには良いツールです。安全衛生標語作りを職場で求められたけれど、どこから始めれば良いかわからない、という場合など、ぜひ使ってみてはいかがでしょうか。
労働安全衛生標語のおすすめテーマ
労働安全衛生標語を作る際、よく用いられるテーマについて紹介します。
全員参加
安全衛生には、従業員全員の参加が必要です。よく「労使一体となって」という言葉が使われますが、労働者(従業員)と使用者(雇用主)が一丸となって安全衛生を推進しなくては、職場の安全衛生は成り立たないということです。ぜひ、全員参加を呼びかける言葉を入れてみましょう。
また、その業界にちなんだ言葉を使うと理解してもらいやすいでしょう。例えば、水銀を含む廃棄物処理を行う野村興産株式会社では「未来のために伝えよう 過去の教訓 安全意識(2021年度)」という標語が銅賞に選ばれています。同社のものではないものの、過去の水銀中毒事故を教訓に、安全衛生を意識してもらおうという試みです。
健康の大切さ
安全衛生のためには、心身の健康が大切です。そもそも安全衛生という考え方自体が、従業員の心身の安全や健康を守るために掲げられるものですから、健康の大切さを訴えるのは理にかなっています。また、特に工場などで馴染み深い「ゼロ災害(災害ゼロ)」などのフレーズを使うのも、労働災害防止をイメージしやすくなるでしょう。声かけの重要性
安全衛生のためには、声かけが重要です。全員参加とも関連しますが、従業員どうしがお互いに声をかけあって安全衛生に対する意識を高め合うことで、より効果的な安全衛生の実施に役立つでしょう。誰もがわかりやすいスポーツ用語やカタカナ語を使い、声かけしやすくするのも有効です。自主参加の呼びかけ
安全衛生には、従業員1人ひとりが参加してくれるような呼びかけが欠かせません。全員参加のためにも、声をかけあうにも、従業員一人ひとりが「自分ごと」として安全衛生を捉える必要があります。自分ごととして安全衛生を捉える上では、具体的な行動や場面をイメージできるよう、実際に起こったことや感じていることを使ったリアルな表現も効果的です。安全衛生標語の事例
最後に、安全衛生標語の過去の事例を3つご紹介します。これから標語を作る際など、ぜひ参考にしてください。
中央労働災害防止協会
中央労働災害防止協会では、昭和60年から標語の公募を始めましたが、中央労働災害防止協会内で作られた標語もあります。こちらのページに昭和52年以降のすべての歴代年間標語が掲載されていますが、その中からいくつかご紹介します。
「手を組んで 今年も安全 こぞって健康(昭和56年)」
「災害ゼロ 夢と未来のある職場(平成元年)」
「安全・健康 今から ここから 自分から(平成10年)」
「小さな危険 あなたが発見 みんなで改善 職場の安全(平成17年)」
「健康安全 意識を高め 目指せゼロ災金メダル(令和2年)」
事例を見てもわかる通り、必ずしも5・7・5でなくてはならないわけではありませんが、基本的な安全衛生標語の考え方に則りながらも、リズム感や語感、時事的なものや話題性のある言葉が取り入れられていることがわかります。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会
陸上貨物運送事業労働災害防止協会では、「荷役」「交通」「健康」をテーマとし、陸運業で働く人々の安全と健康を守るための安全衛生標語を公募しています。ここでは、歴代優秀作品からいくつか事例をご紹介します。
「荷物のロープ 気持ちのロープ どちらも締めて安全作業(平成30年・荷役部門)」
「心の不調を言えますか? みんなでつくる健康職場(令和元年・健康部門)」
「時間に余裕 心にゆとり ルールを守って安全運転(令和2年・交通部門)」
「健診の数値でしっかり現状把握 所見に合わせて予防・改善(令和2年・健康部門)」
「意識して! 心と身体の健康管理 あなたの未来 家族の未来(令和3年・健康部門)」
こちらも必ずしも5・7・5に則っているわけではありませんが、「気持ちのロープ」や「安全運転」など、職場ならではの用語を使った標語が多く見られます。また、近年問題視されているメンタルヘルス対策に関連する標語も多く見られました。
野村興産株式会社
野村興産株式会社では、全国労働衛生週間に関する行事の一環として安全衛生標語、交通安全標語の社内募集を行っています。ここでは、2021年度の安全衛生標語の事例をいくつかご紹介します。
「見える化で 見えない危険を可視化して 気づきを共有 事故防ぐ(金賞)」
「おかしいな 異音異臭 一旦止めて必ず点検(銀賞)」
「コロナより 怖い存在人の慣れ 互いを守る予防対策(銅賞)」
他の2社と比べて、時事関連の用語が多いのが特徴的です。時事関連の用語はニュースなどでも見慣れている人が多いため、イメージしやすくインパクトがある標語を作りやすいでしょう。
安全衛生標語の作り方や事例を知り、効果的な安全衛生標語を作ろう
安全衛生標語が求められる期間や時期は様々ですが、いずれも労働災害を防ぐという安全衛生に則った考え方のもと、作られる標語です。5・7・5などを中心に、リズム感や押韻、命令形や疑問形、掛け詞などを使い、インパクトある標語を作りましょう。また、各職場や業界での公募の場合、職場に合った標語を作ることも重要です。
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<監修者プロフィール>
医師、公認心理師、産業医:大西良佳
医学博士、麻酔科医、上級睡眠健康指導士、セルフケアアドバイザー
北海道大学卒業後、救急・在宅医療・麻酔・緩和ケア・米国留学・公衆衛生大学院など幅広い経験からメディア監修、執筆、講演などの情報発信を行う。
現在はウェルビーイングな社会の実現に向けて合同会社ウェルビーイング経営を起業し、睡眠・運動・心理・食に関するセルフケアや女性のキャリアに関する講演や医療監修も行っている。
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