特定健診・特定保健指導のポイント制度とは?計算や評価の仕方を解説!
特定健診と特定保健指導は、40歳以上75歳未満の従業員などの被保険者を対象に行われる、生活習慣病の改善や予防を目的とした取り組みです。特定保健指導では面談や電話などさまざまな支援の内容ごとにポイントが定められ、規定のポイントを満たすことが重視されています。
この記事では、特定保健指導を実施するうえで押さえておきたい「ポイント制」についてご紹介します。計算や評価の方法について詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
特定健診・特定保健指導とは
特定健康診査(特定健診)は、40歳以上75歳未満の被保険者を対象に行われる、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健診のことです。
特定健診の結果、生活習慣病の発症リスクが高く生活習慣を改善する必要があると判断された方については、特定保健指導が行われます。特定保健指導は、医師や保健師、管理栄養士といった専門家が、生活習慣改善に向けてサポートするものです。
2008年4月から、国民健康保険を運営する市町村や企業の健康保険組合などの医療保険者(国民健康保険・被用者保険)には、特定健診と特定保健指導の実施が義務づけられました。事業者の実施については努力義務とされていますが、円滑な運営のために、保険者に協力する姿勢や知識が求められています。
特定保健指導の種類
特定保健指導は、メタボリックシンドロームのリスク数に応じて、「動機付け支援」と「積極的支援」の2種類に分けられます。
動機付け支援とは、生活習慣の改善に取り組むきっかけを提供するためのサポートのことです。医師や保健師、管理栄養士などの専門家が、対象者と生活習慣を振り返ったうえで、ライフスタイルにあった目標・行動計画を設定し、生活習慣を改善できるようサポートします。対象者が生活習慣を改善するきっかけを提供することが目的であり、指導終了後すぐに実践できるような指導が行われます。
積極的支援とは、生活習慣を改善すべき対象者に対し、専門家が積極的かつ継続的にサポートを行うことです。対象者が生活習慣の改善に向けて行動を続けられるよう、3ヶ月以上にわたって継続的にサポートを行います。動機付け支援に比べて、長期的かつ継続的である点が特徴です。
特定保健指導の対象者
特定保健指導の対象者は、特定健診の結果をもとに選定されます。基準となるのは、以下のメタボリックシンドロームのリスク数です。
1.内臓脂肪型肥満→腹囲とBMIで内臓脂肪蓄積のリスクを判定する。
2.追加リスク→健診結果・質問票より追加リスクをカウントする (1)血糖・・・空腹時血糖値※100mg/dl以上またはHbA1c 5.6%(NGSP値)以上 ※H30年4月1日以降の健診では、やむを得ない場合、随時血糖を用いる。 |
まずは1の内臓脂肪型肥満についてリスクを判定します。A・Bどちらにも当てはまらない場合は、特定保健指導の対象外です。
AかBに当てはまる場合は、2の追加リスクのうち、血糖・脂質・血圧の基準に該当するかを判定します。ここで追加リスクが0の場合は、特定保健指導の対象外です。1つでも該当するものがあれば、特定保健指導の対象となり、喫煙歴の有無についてもリスクとしてカウントします。
内臓脂肪型肥満Aでリスクが1つ、内臓脂肪型肥満Bでリスクが1〜2つの方については、動機付け支援の対象です。内臓脂肪型肥満Aでリスクが2つ以上、内臓脂肪型肥満Bでリスクが3つ以上の方については、積極的支援が実施されます。
ただし、前期高齢者(65歳以上75歳未満)は積極的支援の対象となった場合でも、動機付け支援の対象となります。また、2年連続して積極的支援に該当しても、1年目に比べて状態が改善(※)していれば、2年目の特定保健指導は、動機付け支援相当とすることができます。
(※)BMI30未満の場合:腹囲1㎝以上かつ体重1キロ以上減少、BMI30以上の場合:腹囲2㎝以上かつ体重2キロ以上減少
特定保健指導における「ポイント制」の仕組み
特定保健指導のうち、積極的支援についてはポイント制になっています。積極的支援では3ヶ月以上の継続的な支援を行い、通算180ポイント以上実施しなければ、保健指導を完了したことになりません。ポイント数は、時間と支援内容で定められています。
以下の表は、ポイント制の仕組みをまとめたものです。
支援内容 | 基本的なポイント | 最低限の介入量 | ポイントの上限 |
個別支援A | 5分20ポイント | 10分 | 120ポイント |
個別支援B | 5分10ポイント | 5分 | 120ポイント |
グループ支援 | 10分10ポイント | 40分 | 120ポイント |
電話A | 5分15ポイント | 5分 | 60ポイント |
電話B | 5分10ポイント | 5分 | 20ポイント |
e-mailA | 1往復40ポイント | 1往復 | - |
e-mailB | 1往復5ポイント | 1往復 | - |
出典:厚生労働省
ここでは、ポイント対象となる支援内容や評価・計算方法、ポイントの上限について解説します。
ポイント対象となる支援内容
上の表のとおり、ポイントは支援内容とその時間ごとに定められています。支援は大きくAとBに分かれており、たとえばAに該当する支援を個別面談で実施した場合は個別支援A、電話で実施した場合は電話A、となる仕組みです。
支援Aの内容は、以下のとおりです。
- 対象者の生活習慣および行動計画の実施状況を踏まえ、必要性に応じた支援をする
- 食事、運動など、生活習慣の改善に必要な事項について実践的な指導をする
- 進捗状況に関して、対象者が実践している取り組み内容およびその結果についての評価を行い、必要に応じて行動目標や行動計画の再設定を行う
- 行動計画の実施状況について記載したものの提出を受け、それらの記載に基づいて支援を行う
一方、支援Bの内容は以下のように定められています。
- 初回面接の際に作成した行動計画の実施状況を確認し、行動計画に掲げた取り組みを維持するために励ましや賞賛を行う
このように、Aでは計画策定や生活習慣の改善に向けた具体的な支援活動をする一方、Bでは生活習慣の改善に向けた取り組みを継続できるよう、モチベーションを維持するためのサポートとなっています。
なお、初回面接はポイント対象外となります。あくまでも、初回面接以降の継続的な支援がポイントの対象となる点に、注意が必要です。
特定保健指導のポイント評価・計算方法
支援内容ごとに、ポイント算定要件が以下のように定められています。
支援内容 | 1単位あたりの時間・回数 | 1単位のポイント数 | 要件 |
個別支援A | 5分 | 20ポイント | 支援1回あたり最低10分間以上 |
個別支援B | 5分 | 10ポイント | 支援1回あたり最低5分間以上 |
グループ支援 | 10分 | 10ポイント | 支援1回あたり最低40分間以上 |
電話A | 5分 | 15ポイント | 支援1回あたり最低10分間以上会話 |
電話B | 5分 | 10ポイント | 支援1回あたり最低5分間以上会話 |
e-mailA | 1往復 | 40ポイント | 支援を完了したと実施者が判断するまで、電子メール・FAX・手紙などを通じて支援に必要な情報のやりとりを行うこと |
e-mailB | 1往復 | 5ポイント | 支援を完了したと実施者が判断するまで、電子メール・FAX・手紙などを通じて支援に必要な情報のやりとりを行うこと |
たとえば、個別支援Aを10分間実施した場合は、2単位獲得、つまり40ポイントとなります。個別支援については、支援1回あたり最低10分間以上実施することが要件として定められているため、10分未満の実施ではポイントになりません。たとえば、5分の実施は要件を満たしていないため、1単位(20ポイント)の獲得には至りません。
上記の支援を組み合わせ、通算180ポイント以上獲得した場合、保健指導を完了したことになります。
特定保健指導のポイント上限
支援内容ごとに、以下のとおりポイント上限が定められています。
支援内容 | 要件 |
個別支援A | 120ポイント(30分以上実施しても120ポイント) |
個別支援B | 20ポイント(10分以上実施しても20ポイント) |
グループ支援 | 120ポイント(120以上実施しても120ポイント) |
電話A | 60ポイント(20分以上会話しても60ポイント) |
電話B | 20ポイント(10分以上会話しても60ポイント) |
e-mailA | - |
e-mailB | - |
たとえば、個別支援Aのみで180ポイントの獲得はできません。つまり、個別支援Aを30分実施し、電話Aで20分以上会話する、というように、それぞれの支援内容を組み合わせることが必要です。
また、ポイント対象となる実施時間にも上限が定められています。たとえば、個別支援Aを30分以上実施したとしても、獲得できるポイントは120ポイントです。つまり、個別支援Aを60分、電話Aを40分実施しても、360ポイントとはならず、180ポイントと算出されます。
特定保健指導における「ポイント制」の注意点
ポイントの算定にあたって、以下の点に注意が必要です。
- 1日に1回の支援のみがポイント対象となる。1日で複数の支援を実施した場合は、最もポイント数が高いもののみをカウントする。
- 雑談や次回の日程調整のように、保健指導と直接関係ない情報のやりとりは支援時間に含めない。
- 電話やe-mailによる支援については、双方向による情報のやりとりをカウントする。一方的な情報提供を目的としたやりとりは、支援としてカウントしない。
- 電話またはe-mailのみを使って継続的な支援を行う場合は、e-mail、FAX、手紙などにより、初回面接支援の際に作成した行動計画の実施状況について記載したものの提出を受ける必要がある。行動計画表の提出や作成依頼を目的としたやりとりは、支援としてカウントしない。
180ポイント獲得するための支援を、1日で完結させることはできません。たとえば、1日で電話A10分(40ポイント)と個別支援A20分(80ポイント)を実施した場合、ポイント対象となるのは個別支援A20分のみです。また、保健指導に関係ない会話ややりとりについては、計算の対象外となります。
さらに、直接面談を行わず、電話やe-mailのみで支援を行う場合は、生活習慣の改善に向けた取り組みをきちんと実施できているかを確認するために、行動計画表の作成・提出が必要です。
特定保健指導は、長期的なサポートを通して、対象者が生活習慣を改善できるよう支援するものである、ということを理解しましょう。
支援パターン別のポイント獲得の例
ここでは、支援パターン別のポイント獲得例をご紹介します。ポイント制を理解するために、ぜひ参考にしてください。
<パターン1:個別支援A・電話A・e-mailAで継続的な支援を行う場合>
支援内容 | 実施時期 | 時間 | ポイント |
初回面接 | 初回 | 20分 | -(対象外) |
電話A | 2週間後 | 10分 | 40ポイント |
e-mailA | 1ヶ月後 | 1往復 | 40ポイント |
個別支援A | 2ヶ月後 | 10分 | 10ポイント |
e-mailA | 2ヶ月後 | 1往復 | 40ポイント |
個別支援A | 3ヶ月後 | 10分 | 10ポイント |
<パターン2:個別支援B・グループ支援・電話A・e-mailAで継続的な支援を行う場合>
支援内容 | 実施時期 | 時間 | ポイント |
初回面接 | 初回 | 20分 | -(対象外) |
電話A | 2週間後 | 40分 | 40ポイント |
グループ支援 | 1ヶ月後 | 1往復 | 40ポイント |
e-mailA | 1ヶ月後 | 1往復 | 40ポイント |
個別支援B | 2ヶ月後 | 10分 | 20ポイント |
e-mailA | 3ヶ月後 | 1往復 | 40ポイント |
特定保健指導のポイント
最後に、特定保健指導を実施するうえで理解しておきたいポイントについて解説します。
- 治療中の方は特定保健指導の対象外となる
- 特定保健指導は基準に該当する者全員に実施する必要はない
治療中の方は特定保健指導の対象外となる
特定保健指導の対象となる基準を満たしている方のうち、糖尿病、高血圧症または脂質異常症の治療にかかる薬をすでに服用している方については、特定保健指導の対象外となります。これは、すでに医師の指示のもとで治療を進めているため、重ねて保健指導を行う必要性はないと判断されるためです。
特定保健指導は基準に該当する者全員に実施する必要はない
特定保健指導の対象者は、健診結果を利用し、メタボリックシンドロームのリスク数を基準に選定されます。しかし、必ずしも基準に該当する者全員に特定保健指導を行う必要はありません。
保健財源は限られているため、生活習慣の改善によって生活習慣病の予防効果が大きく期待できる方を優先して、特定保健指導を実施することができます。そのため、基準に該当する全員に実施する必要はないのです。たとえば、保健指導を受けることに消極的な方や、毎年保健指導を実施しているものの改善が見られない方については、優先度を低くできます。
しかし、特定保健指導の普及・実施率向上のためには、可能な限り、対象者全員に対して特定保健指導を実施することが望ましいでしょう。
まとめ:特定保健指導のポイント制を理解して実施に役立てよう
今回は、特定保健指導のポイント制と、実施するうえでの注意点などを解説しました。
特定保健指導のうち、積極的支援についてはポイント制が定められており、180ポイントを獲得しないと保健指導を実施したことになりません。ポイント算定の要件や上限、注意点について、正しく理解することが大切です。
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