健康経営エキスパートアドバイザーとは?取得要件やメリットを知ろう
健康経営を推進したいと思う企業にとって、最も重要なのはその方向づけ、方針の決定ではないでしょうか。健康経営を行いたいと思っても、自社に合った進め方がわからないというケースも少なくありません。
自社にとっての健康課題を洗い出し、実践に結びつけるためには、健康経営エキスパートアドバイザーのサポートがあるとスムーズです。今回は、健康経営エキスパートアドバイザーの資格について、取得要件やメリットを中心にご紹介します。
健康経営エキスパートアドバイザーとは?
健康経営エキスパートアドバイザーとは、東京商工会議所が経済産業省から委託されて運営する資格制度の一つです。健康経営エキスパートアドバイザーの資格を取得すると、健康経営に取り組む中小企業に対し、各企業が抱える課題を抽出したり、改善の提案をしたり、具体的な計画の策定を行ったりと、健康経営の適切な実践・普及を支援することができます。
健康経営エキスパートアドバイザーは上級編の資格であり、初級編の資格として健康経営アドバイザーがあります。詳しくは後述しますが、健康経営エキスパートアドバイザーでは、健康経営アドバイザーと比べ、より実践的・具体的な施策の提案や支援ができるようになります。
健康経営とは?
健康経営とは、経済産業省により「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義されています。従業員の心身の健康を維持・増進することで、パフォーマンスやモチベーションがアップすれば、企業にとっても成長や利益につながることから、従業員の健康管理も「投資」の一つだとする考え方です。
そもそも、従業員は企業にとってなくてはならないリソースの一つです。健康経営を推進し、従業員の健康に投資することは、企業が持続的に成長していくためにも重要なことと言えます。
これまで、従業員の健康管理はあくまでも労働災害を起こさないため、労働安全衛生法や労働安全衛生規則による「守り」の姿勢が主でした。しかし、近年では健康経営の考え方に基づき、積極的に従業員の健康を維持・増進していく「攻め」の健康管理が注目を集めています。
参考:健康経営とは?健康経営の導入効果や取り組み方を詳しく解説
健康経営エキスパートアドバイザーの業務内容
健康経営エキスパートアドバイザーの業務内容について、詳しく解説します。
基本は「実践支援」
健康経営エキスパートアドバイザーが行う基本的な業務には、以下のようなものがあります。
- 健康経営の基本的な考え方や社会的背景について、わかりやすく説明する
- 実施のメリット、取り組み事例、公的施策などの情報を提供する
- 関連する法規、保険事業や先進事例などを交えながら、具体的なアドバイスを行う
健康経営エキスパートアドバイザーは、健康経営に取り組むための課題を抽出し、整理したのち、課題解消のために必要な取り組みを具体的にアドバイスし、実践をサポートし、見直しや改善にも積極的に関与する、というように、健康経営の取り組み全般を支援します。
「守り」と「攻め」の健康経営
健康経営エキスパートアドバイザーは、健康経営の根幹となる考え方である「攻め」=従業員の健康維持・増進のアプローチを提言することはもちろん、当然守るべき従来の「守り」=リスクマネジメント、労働災害防止に関する取り組みにも助言を行います。
守りの健康経営には法令遵守や労働災害の発生防止、事故や不祥事の予防が含まれます。攻めの健康経営を行う前に、これらの土台がしっかりできているかどうかチェックしなくてはなりません。これは、企業には従業員に対して「安全配慮義務」があるためで、時には働き方の見直しや安全対策も必要です。
守りの健康経営、すなわちリスクマネジメントがしっかりできていることが確認できたら、いよいよ攻めの健康経営を実践していきます。既存の従業員の健康を維持するとともに、さらに向上できないかどうかチェックします。例えば、長時間労働による寝不足や疲労などの体調不良があって労働生産性が下がっているなら、業務体制の見直しを実施します。
具体的な実践アドバイス
前述のように、健康経営エキスパートアドバイザーは、健康経営の概念や一般論としての情報提供を行うだけでなく、各企業に合わせた課題の抽出と、解消のためにできる対策の具体的なアドバイスを行います。その中でも「具体的な実践アドバイス」は健康経営エキスパートアドバイザーの最も重要な業務です。そこで、実際の施策例をいくつかご紹介します。
例えば、従業員に健康を意識してもらうための施策として、以下のような施策が考えられます。
- 健康診断で二次検査が必要と判断された従業員に、受診勧奨を行う
- 健康診断のオプション検査を費用負担し、プラスして受けてもらう
- 血圧計、体温計、体重計などを設置し、誰でも使えるようにする
- 朝礼などで、ラジオ体操やストレッチなどの時間を設ける
- ストレスチェックを実施する
例えば、健康診断を従業員に受けさせることは企業の義務です。そのため、健康診断の結果を健康管理に活かせるよう、まずは健康診断で二次検査が推奨される従業員に対して受診勧奨を行う、ということも健康経営の第一歩です。
また、血圧計や体温計などの測定機器を設置しておき、事業場にいる人が誰でも測れるようにしておくことや、朝礼などにラジオ体操・ストレッチなどを取り入れることなども、比較的すぐに取りかかれて従業員自身も参加しやすい取り組みの一つです。心の健康にアプローチするためには、ストレスチェックを行うのも良いでしょう。
このように、健康経営エキスパートアドバイザーの実践アドバイスや計画はコストや期間がかかるものばかりではなく、むしろすぐに始められて低コストなことからスタートするのが一般的です。
特に中小企業では、ある程度の実績が出ないと予算を組みにくいケースも多いです。まずは小さな取り組みから始め、実績を積んでからだんだん取り組みを広げていくと良いでしょう。
健康経営アドバイザーとの違い
健康経営アドバイザーと健康経営エキスパートアドバイザーでは、支援できる内容の深度や範囲が異なります。
健康経営アドバイザー:基本的な健康経営の普及や取り組みの推進
健康経営エキスパートアドバイザー:各企業の課題抽出、改善案や計画の提示、PDCAサイクルの支援など
健康経営アドバイザーは、健康経営に関する一定の知識を持っていることを証明する資格であり、勉強さえしっかりすれば誰でも取得できます。そのため、基本的な健康経営の概念を説明したり、自社内での取り組みを推進したりすることが主な支援内容です。
一方、健康経営エキスパートアドバイザーは、健康経営アドバイザーの資格を持った上で、他の専門資格を持っていたり、実務経験があったりしないと受験することができません。そのため、支援できる内容はより具体的に、かつ多岐にわたり、具体的な改善案や計画を打ち出したり、PDCAサイクルを回したりすることも含むのです。
参考:健康経営アドバイザーとは?資格取得のメリットや取得方法を解説
健康経営エキスパートアドバイザーを取得・配置するメリット
健康経営エキスパートアドバイザーを取得する、または資格取得者を採用・配置するメリットについて解説します。
健康課題の洗い出しができる
健康経営エキスパートアドバイザーが最初に行うこととして、各企業が抱えるそれぞれの健康課題の洗い出しがあります。企業によって、行う業務も抱える従業員もそれぞれ異なるため、企業によって取り組むべき課題も異なります。
例えば、デスクワークが多い業務なら従業員の運動不足が課題である可能性があります。もし、健康診断で二次検査を推奨される従業員が多いなら、まず日頃の健康意識について啓蒙する必要があるかもしれません。
このように、健康経営エキスパートアドバイザーは各企業が抱える健康課題を詳しくヒアリングし、関連法規や公的施策などと組み合わせることで、具体的にどのような点に問題があるか抽出できます。
具体的な改善案と実施計画を提示できる
健康経営アドバイザーが行う支援は、あくまでも概論的なものに限られます。一方、健康経営エキスパートアドバイザーであれば、保険事業や先進事例と照らし合わせ、より具体的な改善案や実施の計画を提案できます。
さらに、健康経営エキスパートアドバイザーの業務の一つとして、施策実行後の見直しやフィードバックの反映があります。PDCAサイクルをしっかり回し、よりよい健康経営の取り組みにつなげましょう。
健康管理における問題点を減らせる
健康経営エキスパートアドバイザーは、行った施策の効果を確認し、問題点があれば施策や計画の見直し・改善につなげながらPDCAサイクルを回すことも業務の一つです。これにより、従業員の健康管理における問題点を減らし、より良い健康経営を実践することが可能になるでしょう。健康経営エキスパートアドバイザーを取得するには?
健康経営エキスパートアドバイザーを取得するための要件について説明します。
受講資格
健康経営エキスパートアドバイザーの資格を取得するためには、「健康経営エキスパートアドバイザー研修」を受講する必要があります。受講のためには、以下の2つの要件を満たしていなくてはなりません。
- 健康経営アドバイザーの資格を取得していること
- 所定の資格、または実務経験を有していること
所定の資格 | 所定の実務経験 |
▼経営・労務に関する資格 ・中小企業診断士 ・社会保険労務士 ▼医療・保健に関する資格 ・医師 ・保健師、看護師 ・労働衛生コンサルタント ・管理栄養士 ・健康運動指導士 |
(下記いずれかの実務に概ね1年以上関わっていること) 1.「健康」「医療」「保健」に関する実務…医療保険者・医療機関・健診機関等での勤務経験など 2.「経営」に関する実務…経営者本人または、経営企画など企業経営に従事していた経験など 3.「人事労務」に関する実務…人事担当者、労務管理担当者として従事していた経験など 4.「健康経営」に関する実務…健康経営の普及や支援に携わっていた、企業などで実践に関わっていたなど |
認定の手順
健康経営エキスパートアドバイザーの認定を受けるためには、以下の手順で行います。
- 知識確認テスト(多肢選択式、50問90分)の申し込みを行う
- 研修教材、知識確認テストの案内を受け取り、自己学習する
- 知識確認テストを受験する
- テスト合格後、ワークショップの申し込みをする
- ワークショップに参加し、効果測定を行う
ワークショップ後の効果測定に合格すれば、健康経営エキスパートアドバイザーに合格となります。知識確認テストの日時や受験場所は申し込みページで選べますので、行きやすい場所や時間を選びましょう。合格に必要な知識確認テストの正答率は約8割以上であり、かなり高い水準が求められます。研修教材を使い、よく勉強しましょう。
知識確認テストに合格すると、ワークショップ申し込みの案内を受けられます。また、前回の研修で「テストに合格したものの、ワークショップで不合格になった」という場合、次回の研修のみ、知識確認テストを免除し、ワークショップから受講することも可能です。
ワークショップの内容
ワークショップでは、以下の内容を受講します。
①ヒアリングスキル(必要な情報の収集力)の習得
…ヒアリングシートを活用したロールプレイ
②健康経営の実践支援のための具体的な助言・提案力の習得
…個人ワークおよびグループワークを通じて事例企業の改善提案を検討
…健康経営診断報告書の作成
ワークショップ終了後、効果測定として「研修とは異なる事例企業の情報に基づき、健康経営診断報告書を作成・提出」します。これもだいたい8割以上の正答となれば、晴れて「健康経営エキスパートアドバイザー」として認定されます。
受講料
健康経営エキスパートアドバイザー研修の受講料は、以下のようになっています。
知識確認テスト…5,500円(税込)
ワークショップ…22,000円(税込)
また、知識確認テストに申し込む際、テキストを同時に申し込むことができます。テキストが必要な場合は、テキスト代(税込2,200円)を加えた7,700円(税込)が申し込み料となるため、注意しましょう。決済は、クレジットカードまたはコンビニ決済が利用できます。
更新手続き
健康経営エキスパートアドバイザーにも、健康経営アドバイザーと同じく認定期間が2年と定められています。健康経営エキスパートアドバイザーの更新手続きのためには、以下の3つのステップが必要です。
- Web動画研修(無料)を3講座以上受講し、効果測定テストに合格する
- 更新申請を行う
- 更新Webテストを受験し、合格する
更新申請からテストの受験、合格して更新が可能な期間は、認定期間満了日の3ヶ月前から認定期間満了日までの間です。Web動画研修の受講は認定期間内ならいつでも受講できますので、早めに受講しておきましょう。
更新料は16,500円(税込)で、支払いが完了すると「更新Webテスト」の受験が可能になります。正答率は8割以上で、合格するまで追加費用不要で何度も受験することができますが、認定期間満了日までに合格できなかった場合は更新できません。更新手続きは早めに行うようにしましょう。
健康経営エキスパートアドバイザーを取得・配置し、健康の管理体制を充実させよう
健康経営エキスパートアドバイザーは、健康経営の基本的な考え方の説明・普及はもちろん、各企業が抱える課題を抽出したり、改善の提案をしたり、具体的な計画の策定を行ったりと、健康経営の適切な実践・普及を支援します。そのため、資格取得のためには健康経営アドバイザーの資格に加え、専門資格や実務経験が求められると考えられます。
健康経営エキスパートアドバイザーがその手腕を十分に発揮するためには、社内で健康経営に取り組むための課題をしっかり把握しなくてはなりません。健康課題把握のためには、従業員の健康情報を一元管理できるクラウド型健康管理システム「Growbase(旧:ヘルスサポートシステム)」の活用がおすすめです。
健康診断の受診やストレスチェック状況なども同時に管理できますので、健康経営の施策・計画に活かすこともできます。健康経営エキスパートアドバイザーを取得・配置し、クラウド型健康管理システムを活用しながらよりよい健康経営の取り組みを行いましょう。
Growbaseを導入することにより、健康管理業務にかかる時間や工数を削減することが可能です。組織全体の健康課題を可視化することで、早めのフォローを実施しやすくなります。
また、使いやすいUIと自由度の高い機能を備えており、個別・一括メール配信、面談記録、受診勧奨、部下状況、特殊健康診断の業務歴調査と管理、健診データ一元化、各種帳票出力(労基報告など)、ストレスチェック、長時間労働管理などの機能が充実しています。
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執筆者:Growbase編集部