【人事必見】メンタルヘルスとは?悪化の要因や不調のサイン、対策について解説!
メンタルヘルスとは、心の健康状態のことです。従業員が良好なメンタルヘルスを維持して働けるようにするためには、ストレスやメンタルヘルスについて正しく理解し、必要なケア・取り組みを行うことが求められます。しかし、メンタルヘルス対策のために何をすればよいのか、従業員の不調に気づくためにはどうすればよいのかなど、わからないことも多いでしょう。
この記事では、メンタルヘルスとは何か、影響を与える要因や不調によって起こる精神疾患などの基本から解説します。また、人事やマネージャーが知っておくべき不調のサインや対策の具体的な方法、取り組みのポイントもご紹介しています。人事労務に携わっている方は、ぜひ参考にしてください。
メンタルヘルスとは?
厚生労働省によると、メンタルヘルスは体ではなく心の健康状態のことです。また、世界保健機関(WHO)は、メンタルヘルスを「自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる健康な状態」と定義しています。例えば、「やる気がある」「心が穏やかである」という状態は、心が健康である、つまりメンタルヘルスが良好であると言えます。
一方、気分がずっと落ち込んでいたり、大きなストレスを抱えたりすると、無意識のうちに自身をコントロールできなくなります。こうした状態は、メンタルヘルスに異常をきたしていると言え、適切なケアが必要です。
出典:厚生労働省「メンタルヘルスとは」
出典:日本看護協会「メンタルヘルス Mental Health」
メンタルヘルスをめぐる現状
メンタルヘルス対策の重要性について解説するにあたって、まずはメンタルヘルスをめぐる現状についてご紹介します。
厚生労働省が令和3年に実施した労働安全衛生調査では、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業者の割合は、10.1%です。令和2年時の調査では9.2%であったため、増加していることがわかります。
個人の調査を見てみると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は、53.3%です。令和2年時の調査では54.2%であったため、微妙に減少はしているものの、半数以上という結果となっています。
このように、メンタルヘルスに不調を抱えている労働者や、不調ゆえに休職・退職した労働者が多く存在するのが現状です。
一方、メンタルヘルス対策への取り組み状況を見てみると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は 59.2%と、6割未満にとどまります。ここから、職場におけるメンタルヘルスの問題は深刻であるにもかかわらず、取り組みを行っていない事業所がいまだに多く存在することがわかるでしょう。
参考:厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況 」
メンタルヘルスに影響を与える要因
メンタルヘルスに影響を与える要因としては、さまざまな要素が考えられます。ここでは、メンタルヘルスに影響を与える要因を5つご紹介します。
- 過度な業務量
- 仕事の量や裁量権
- 人間関係におけるトラブル
- 職場の物理的環境
- 職場以外の私的要因
過度な業務量
厚生労働省の労働安全衛生調査では、「就業形態別にみた強いストレスの内容別労働者割合」のうち、もっとも多いのが「仕事の量」でした。また、「仕事の失敗、責任の発生等」は3番目に多いという結果です。
キャパシティを超える業務量で業務時間が増えたり、責任が増大することへのストレスを抱えたりすることで、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすケースが多く見られます。
参考:厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況 」
仕事の質や裁量
仕事の質や裁量権・自由度が低く、ストレスを抱える場合もあります。例えば、次のような例があります。
- モチベーションがあるにもかかわらず、いつまでも簡単な仕事しか任せてもらえない
- 上司の指示どおりの仕事しかできず、積極性を持って働けない
このような場合、従業員はやりがいを感じられず、ストレスを感じてしまうでしょう。管理職には、部下をサポートするだけでなく、部下の能力を見極めて仕事を任せることも求められます。
人間関係におけるトラブル
人間関係におけるトラブルも、大きなストレスの原因となります。
特に、最近ではハラスメントが問題視されています。上司からのパワーハラスメントやセクシュアル・ハラスメント、モラルハラスメントなど、さまざまなハラスメントを受けた側は、心理的に大きなストレスを抱えてしまいます。
職場の物理的環境
職場の広さやレイアウト、照明、騒音、空調、作業スペースの広さなど物理的な環境もストレスの原因となります。
メンタルヘルスの不調は、さまざまな要因が組み合わさって起こるものです。職場の物理的な環境や人間工学的な側面は見逃されがちですが、ほかの要因と合わさって精神疾患に発展する可能性もあるため、注意しましょう。
職場以外の私的要因
仕事と直接関係ない私的な問題から、ストレスを抱えてしまうケースも多く見られます。
私的要因としては、病気や離婚、介護、金銭トラブルなど、さまざまな要因が考えられます。会社が従業員の私的要因に介入することは難しいものの、まわりの人が異変に気づき、相談に乗ることが大切です。
メンタルヘルスに起因する代表的な精神疾患
厚生労働省は、国民の健康を保持するために広く継続的な医療を提供すべき疾病として、2011年から「精神疾患」を追加しました。メンタルヘルスが悪化することで、以下のようなさまざまな精神疾患につながるリスクがあります。
- うつ病
- 適応障害
- 不安障害
- 睡眠障害
- 依存症(アルコールや薬物など)
ここでは、それぞれの精神疾患について解説します。
うつ病・双極性障害
うつ病は、代表的な精神疾患の1つで、気分が激しく落ち込んだり、好きなことが楽しめなかったりなど、抑うつ状態が続く病気です。また、抑うつ状態と、異常にハイテンションで活動的になる躁状態が繰り返し起こる、双極性障害も存在します。
うつ病になると、会社に行けなくなり、やがて引きこもるようになってしまいます。自傷や自死につながってしまうリスクも高く、注意が必要です。
一方、躁状態では極端にテンションが高まり行動的になります。一見よいことのように思えますが、身体の疲れを無視して活動してしまうため身体に影響が出たり、ささいなことで攻撃的になったりします。また、躁状態のときは、自身が精神疾患を抱えているという自覚がなくなってしまうため、治療を自己判断でやめてしまうケースが多く危険です。
日本人の100人に約6人がうつ病を経験していると言われており、いつ誰がなってもおかしくない精神疾患であることに注意が必要です。
適応障害
適応障害は、特定のストレスが原因で抑うつ状態になり、めまいや強い不安感、怒りなどの症状が出て、自身をコントロールできなくなってしまう病気です。
うつ病に似ていますが、ストレスの原因から離れれば症状が落ち着くのが特徴です。そのため、有効な治療法はストレスの原因を取り除くことであり、職場環境がストレスの原因である場合は、休職して治療する必要があります。
不安障害
不安障害は、精神的な不安から、心や体にさまざまな症状が出てしまう病気です。不安障害のなかには、以下のような病気があります。
- パニック障害
- 社会不安障害
- 強迫性障害
- 全般性不安障害
症状によっては、突然発作を引き起こすこともあり、いつ発作が起こるかわからないという恐怖から引きこもりにつながってしまう場合も多く見られます。再発する可能性も高いため、半年〜1年以上は継続して治療を行わなければなりません。
睡眠障害
睡眠障害は、不眠に陥ったり、寝つきが悪く十分な睡眠時間を確保できなかったりして、日中の活動に支障をきたす病気です。
さまざまな原因が考えられますが、精神的なストレスが原因となるケースが少なくありません。身体的な負担が重く、ほかの病気につながる可能性もあるため、早期に対処することが求められます。
依存症
依存症は、アルコールやタバコなど、特定の食べ物や飲み物に依存したり、薬物や万引きといった違法行為がやめられなくなってしまったりする病気です。依存しているものによって身体的・精神的にダメージを受け、日常生活に影響が出てしまいます。
抜け出そうと思っても、禁断症状に苦しむことになるため、自分の力だけで治すのは困難です。また、依存を繰り返すうちに、快楽物質であるドーパミンの分泌量が減り、さらに多くの量を求めるようになってしまいます。
専門機関による入院治療や、ほかの依存症患者との共同生活を通して、徐々に依存から抜け出す必要があります。
メンタルヘルス不調のサインとは
メンタルヘルス不調のサインは、従業員の行動や体調に現れます。メンタルヘルス対策においては、上司や周りの従業員が不調のサインに気づき、適切な措置につなげることが欠かせません。
ここでは、メンタルヘルス不調のサインについて解説します。
- 行動に現れるサイン
- 体調に現れるサイン
行動に現れるサイン
従業員の行動に現れるサインとしては、以下が挙げられます。
- 遅刻や早退、無断欠勤が目立つ
- 集中力やモチベーションが低下し、ミスが目立つ
- 社内での行動や見た目が変化する
遅刻や早退、無断欠勤や、有給休暇の取得の増加は重要なサインです。ただ怠けているのではなく、「会社に行きたくない」「仕事がつらい」という精神的不調が疑われるからです。そのほか、勤務中に席を立つ回数が増えたり、休憩時間が長くなったりした場合も、何かしらの職場ストレスを抱えていると推察できます。
メンタルヘルスに異常をきたすと、集中力やモチベーションが低下するため、ミスが目立つようになります。業務が滞ったり、アウトプットの質が悪くなったりした場合は、メンタルヘルスの悪化が考えられるでしょう。
また、あいさつが減る、ほかの従業員とコミュニケーションをとろうとしない、残業時間が増えるなどの行動変化や、身だしなみがだらしなくなるなどの見た目の変化も、メンタルヘルス不調の見逃せないサインです。
メンタルヘルスが悪化しやすい人の特徴として、「責任感が強く真面目」であることが挙げられます。普段からは考えられない異常が見られた場合は、何かしらの問題を抱えていると考えた方がよいでしょう。
体調に現れるサイン
以下のような症状が見られる場合は、メンタルヘルスの不調が疑われます。
- 体がだるい
- 微熱が続く
- 食欲不振
- 耳鳴り
- 不眠
- 動悸
ほかにも、さまざまな症状が考えられます。体調不良が続いている従業員は、メンタルヘルスに異常をきたしている可能性があるかもしれません。
しかし、当事者が責任感ゆえになかなか周囲に言い出せなかったり、管理監督者が症状を「気のせい」「疲れているだけだ」と片付けてしまったりするケースもまだまだあります。メンタルヘルス不調の可能性を疑い、長期にわたって症状に悩まされている場合は、すぐに従業員を受診させることが望ましいでしょう。
メンタルヘルスにおける4つのケアと取り組み
メンタルヘルスケアと一口に言っても、以下のように4つのケアが存在します。
- セルフケア
- ラインケア
- 事業内産業保健スタッフによるケア
- 事業場外資源によるケア
以下では、それぞれのケアの内容と具体的な取り組みについて解説します。
セルフケア
セルフケアとは、従業員が自らのメンタルヘルス不調に自身で気づき、ストレスに対処することです。セルフケアを実践するためには、メンタルヘルスやストレスに関する基礎知識や、ストレスの対処法などを身につける必要があります。
セルフケア対策としては、正しい知識を習得するためのメンタルヘルス研修が挙げられます。
また、社内外の相談窓口を周知することで、従業員が気軽に相談できるようにすることも重要です。
ラインケア
ラインケアとは、上司や部長などの管理監督者が、部下のメンタルヘルス不調を早期に察知し、適切な対応をとることです。メンタルヘルス対策において、管理監督者の役割は非常に重要とされています。部下の異変に気づくほか、適切な声かけや1on1の実施、必要に応じて相談窓口に誘導したりして、適切な措置を行うことが求められるのです。
ラインケアに必要な知識についても、メンタルヘルス研修で習得できます。
そのほか、職場環境の改善に取り組んだり、休職した従業員の職場復帰を支援したりすることも、ラインケアの1つです。
事業内産業保健スタッフによるケア
事業内産業保健スタッフによるケアとは、事業場内における産業保健の担当者が行うメンタルヘルスケアです。産業医や保健師、衛生管理者、人事労務担当者などが該当します。
事業内産業保健スタッフによるケアとしては、以下のような取り組みがあります。
- メンタルヘルス対策についての計画を策定する
- 従業員の健康情報を取り扱う
- 窓口を設置して相談に乗る
- 事業場外資源とのネットワークを形成する
事業場外資源によるケア
事業場外資源によるケアとは、病院やクリニック、地域保健機関、従業員支援プログラム機関などの社外の機関や専門家を活用したメンタルヘルスケアです。事業場外資源は、メンタルヘルスに関する専門的な知識を持っているため、効果的なケアの実施に役立ちます。また、従業員が相談内容や自身の状態を事業場に知られたくない場合、事業場外資源を活用することが効果的です。
具体的には、事業場の課題や自身が抱えるストレスを相談してアドバイスをもらったり、休職者の復職指導を受けたりなどの取り組みが挙げられます。
メンタルヘルス対策におけるポイント
メンタルヘルス対策におけるポイントは以下のとおりです。
- メンタルヘルスやストレスに関する正しい知識を持つ
- ストレスチェックを活用する
- 必要に応じて産業医や外部の専門家の協力を仰ぐ
以下では、メンタルヘルス対策におけるポイントについて解説します。
研修を通じてメンタルヘルスに関する正しい知識を持つ
効果的なメンタルヘルス対策を講じるためには、まずはメンタルヘルスやストレスについて、従業員が正しい知識を持つ必要があります。そのために有効なのが、メンタルヘルス研修です。
メンタルヘルス研修は、従業員がストレスやメンタルヘルスについて正しい知識を身につけることや、管理監督者が部下のメンタルヘルス不調のサインに気づけたり、声かけと正しい措置で迅速に対応できたりすることを目的に実施される研修です。座学やロールプレイングなどを通して、必要な知識を身につけられます。
メンタルヘルス研修を実施することで、メンタルヘルスについて従業員が共通認識を持てるほか、職場環境の見直しや改善にもつながります。
ストレスチェックを活用する
メンタルヘルス対策では、現在の職場環境を把握し、改善することが求められます。そのためには、ストレスチェックの集団分析の結果を活用することが有効です。
ストレスチェックとは、2015年12月以降労働安全衛生法で義務づけられた、労働者のストレスの度合いを把握する調査のことです。ストレスチェックにより、従業員自身が自身のストレス度合いに気づけるようになります。ストレスチェックの結果、指導が必要であると判断された対象者については、医師による面接指導が行われます。ストレスチェックは、従業員のセルフケアに役立つ重要な調査です。
また、会社全体の結果を分析する集団分析を実施することで、現在の職場環境における問題点が明らかになり、環境改善にも活用できます。
ストレスチェックは、常時使用する従業員が50人以上の事業場については、年に1回実施することが義務づけられています。50人未満の事業場では努力義務ですが、メンタルヘルス対策に役立つため、実施することが望ましいでしょう。
必要に応じて産業医や外部の専門家の協力を仰ぐ
メンタルヘルス対策においては、ストレスやメンタルヘルスに関する専門的な知識が必要です。ゆえに、企業の人事労務担当者のみで取り組むのは難しい場合も多いでしょう。
効果的なメンタルヘルス対策のためには、産業医のサポートを受けたり、必要に応じて病院や地域保健機関、従業員支援プログラムなど、外部の専門家の協力を仰いだりすることが大切です。
産業医や外部のサポートを受ける場合は、従業員の個人情報の保護に配慮しながら、十分な情報共有を行う必要があります。
まとめ:メンタルヘルスについて理解し、対策に取り組もう
この記事では、メンタルヘルスとは何か、影響を与える要因や不調によって起こる精神疾患、不調のサインや具体的な取り組み、ポイントを解説しました。効果的なメンタルヘルスケアを行うためには、ストレスやメンタルヘルスについて正しい知識を身につけ、全社的に取り組むことが大切です。
メンタルヘルス対策を効率的に行い、従業員の健康管理を強化したい場合は、健康経営の取り組みに特化したシステムの利用が有効です。クラウド型健康管理システムである「Growbase(旧:ヘルスサポートシステム)」なら、健康診断結果、ストレスチェックデータ、就労データ、面談記録などの従業員の健康情報をペーパーレスで一元管理できます。効果的なメンタルヘルス対策のために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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